天の川銀河の厚い円盤は130億年前から形成が始まった

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位置天文衛星「ガイア」の観測により、天の川銀河の厚い円盤が約130億年前から形成され始めたことが示された。これまでの予想より約20億年も早い。

【2022年3月30日 ヨーロッパ宇宙機関

独・マックスプランク天文学研究所のMaosheng XiangさんとHans-Walter Rixさんの研究チームは、ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」の観測データを使用して、天の川銀河の「厚い円盤」と呼ばれる領域の形成がこれまでの予想よりも20億年ほど早く始まったことを明らかにした。今から約130億年前、ビッグバンからおよそ8億年後のことだという。

天の川銀河は円盤部(ディスク)と、これを大きく取り囲むハローとに大きく分けられ、さらに円盤部は「薄い円盤」と「厚い円盤」の2つの部分で構成されている。薄い円盤には私たちが夜空に天の川として見ている星のほとんどが含まれている。また厚い円盤は薄い円盤の2倍以上の厚みがあり、半径は小さい。

真横から見た天の川銀河のイラスト
真横から見た天の川銀河のイラスト。中心に「バルジ」(と棒構造)があり、その周囲に円盤が存在する。さらに円盤を取り囲むようにハローが球状に広がっている。左上の囲みは薄い円盤(左)と厚い円盤(右)の厚みを示す(提供:Stefan Payne-Wardenaar / MPIA)

こうした構造を持つ天の川銀河がどのように形成されたかを解明するには、銀河内の星の年齢を正確に決定する必要がある。星の年齢を直接測定することはできないが、スペクトルの特徴から得られる化学組成と恒星進化のコンピュータモデルとを比較すると推測することができる。Xiangさんたちは、ガイアの第3期初期データ(EDR3)のなかから「準巨星」と呼ばれる進化段階にある星々の明るさと位置を調べ、中国の多天体分光器「LAMOST」のデータから得られた星の化学組成と合わせて、約25万個の星の年齢を数%の誤差で導き出した。これまでは誤差が20~40%もあったため、恒星の推定年齢には10億年以上もの不正確さがあった。

Xiangさんたちはそれぞれの円盤やハローという異なる領域に存在する準巨星を特定し、その年齢から天の川銀河の形成年表を作成して、銀河の形成が2つの段階に分かれていたらしいことを突き止めた。第1段階は130億年前に始まった、厚い円盤での星形成だ。この段階でハローの内側の形成も始まっていたかもしれないという。

その約20億年後、「ガイア・ソーセージ・エンケラドス」と呼ばれる矮小銀河が天の川銀河と合体することによって、第2段階の形成が始まった。この合体により星形成プロセスが急速に加速してハローは星で満たされ、厚い円盤における星の大部分の形成が引き起こされた。また、太陽を含む薄い円盤内の星は、この第2段階で形成されたものだ。

ガイア・ソーセージ・エンケラドスとの合体で始まった厚い円盤での活発な星形成は、ここから約30億年続いたとみられる。研究からは、円盤内のガスがよくかき回され、円盤全体で混ざっていたことを示す結果も得られている。

「今回の研究によって、天の川銀河の形成年代や星形成率、重元素増加の歴史などが驚くほど詳しく示されました。天の川銀河がいつどのように形成されたのかというイメージを一新するものです」(Xiangさん)。

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