宇宙望遠鏡「ユークリッド」、打ち上げ成功
【2023年7月3日 ヨーロッパ宇宙機関】
日本時間7月2日0時12分、ヨーロッパ宇宙機関の宇宙望遠鏡「ユークリッド(Euclid)」を搭載したスペースX社のファルコン9ロケットが、米・フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられた。45分後、ロケットから分離されたユークリッドからの信号が確認され、打ち上げは成功した。
ユークリッドは今後、地球から見て太陽の反対側にあり重力的に安定したラグランジュ点「L2」を周回する軌道(ハロー軌道)に投入される。最終軌道までの移動には約30日かかり、それから約2か月にわたって望遠鏡と観測機器の性能を確認した後、観測を開始する予定だ。
ユークリッドは口径1.2mの反射望遠鏡で、銀河の鮮明な姿をとらえる可視光線撮像器「VIS」と、銀河までの距離を調べるのに必要な赤外線スペクトルを取得する近赤外分光計・測光装置「NISP」という2つの観測装置を備える。約6年間の運用期間中に全天の3分の1以上を観測し、私たちから100億光年以内の距離にある数十億の銀河を調べ、これまでで最も大きく最も正確な宇宙の立体地図を作成する計画だ。その後は1年間の追加サーベイも予定している。
ユークリッドの目的は、100億年間にわたる銀河や宇宙の大規模構造の変遷をたどることで、宇宙の膨張がどのように変化してきたかを知り、宇宙究極の謎ともいえる暗黒エネルギーと暗黒物質の性質に迫ることだ。望遠鏡の名は「幾何学の父」と称される古代ギリシアの数学者エウクレイデスの英語読みから取られた。その名にふさわしく、宇宙の幾何学と密接に関わるエネルギーや物質の密度を解き明かすことが期待されている。
〈参照〉
- ESA:ESA’s Euclid lifts off on quest to unravel the cosmic mystery of dark matter and dark energy
- NASA JPL:ESA’s Euclid Mission Launches to Explore ‘Dark Universe’
〈関連リンク〉
関連記事
- 2023/12/27 銀河の形状と分布で検証する初期宇宙のゆらぎ
- 2023/10/31 バリオンとニュートリノも考慮した過去最大の宇宙論シミュレーション
- 2023/09/22 銀河団のメンバー銀河を用いた宇宙物質量の新測定法
- 2023/09/11 初期宇宙のさざ波か、銀河が作る巨大な泡「ホオレイラナ」
- 2023/09/08 ダークマターの小さな「むら」をアルマ望遠鏡で初検出
- 2023/05/09 宇宙背景放射からダークマター分布を調査、「宇宙論の危機」回避なるか
- 2023/04/18 宇宙論の検証には、銀河の位置だけでなく向きも重要
- 2023/03/10 小規模な装置でダークマター検出を目指す新手法
- 2023/02/13 ガンマ線観測でダークマター粒子の性質をしぼり込む新成果
- 2023/01/13 「迷子星」の光から銀河団の歴史をさぐる
- 2022/10/27 115億年前の初期宇宙で形成中の原始銀河団
- 2021/09/17 宇宙の歴史を再現する世界最大規模のシミュレーション
- 2021/07/09 ダークマターの地図をAIで掘り起こす
- 2021/05/14 ガスに隠れた遠方銀河
- 2020/12/01 宇宙背景放射に暗黒物質・エネルギーの「指紋」の可能性
- 2019/06/06 原始惑星系円盤の偏光観測からダークマターの正体に迫る
- 2018/10/09 ダークマターの正体はブラックホールではなさそう
- 2018/04/03 ダークマターのないシースルー銀河
- 2018/01/31 ダークマターの動きを教える天の川銀河最古の星々
- 2017/12/13 ダークマターの大海原に浮かぶ巨大原始銀河