小規模な装置でダークマター検出を目指す新手法

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ダークマターの正体として候補に挙がる粒子「ダークフォトン」を検出する極低温のミリ波受信機が開発され、小規模な実験装置ながら世界に先駆けた探索方法が確立された。

【2023年3月10日 京都大学

宇宙には光で観測できる物質の5倍以上ものダークマター(暗黒物質)が存在し、銀河を満たしている。ダークマターは正体不明で、未だ直接検出されたこともないが、質量を持ち、重力による影響を及ぼすことはわかっている。しかし、ダークマターが粒子だとして、その粒子1個あたりの質量がどれほどであるかもわかっていない。

ダークマターを検出しようとする実験は盛んに行われているが、その多くはダークマター粒子が陽子よりも重いと仮定してきた。なかなか探索が成功しない中、ダークマターが実は軽い粒子なのではないかという可能性も注目され始めている。京都大学白眉センターの小高駿平さんたちの研究チームは、軽いダークマター候補の中でも、光と微弱に反応するという特徴も持つ理論上の粒子「ダークフォトン」に注目した。

予測によれば、ダークフォトンは金属板の表面で微弱な光に転換され、その光が板と垂直な方向に放出される。このとき、ダークフォトンが持っていた質量は、転換した光が持つエネルギーに変わる。光のエネルギーはその周波数に対応するので、ダークフォトンの質量が小さければ、それだけ転換光の周波数も小さくなるはずだ。

今回の実験のイメージ図
今回の実験のイメージ図(提供:京都大学、以下同)

そこで小高さんたちは、ダークフォトンの質量が陽子のおよそ10兆分の1だった場合に金属板から放出される転換光の検出を目指した。この場合の転換光はミリ波となるが、宇宙の観測でも地上での実験でも、この帯域からダークフォトンを探す試みは前例がない。研究チームは18~26.5GHzの転換光を受信できる受信機に加え、受信機自体からミリ波が出ないように、摂氏マイナス270度の極低温まで冷やす装置を開発した。

実験で使用されたミリ波受信機と測定機器
実験で使用されたミリ波受信機と測定機器(左)と受信機の断面図(右)

装置は正常に作動し、世界で初めてミリ波でダークフォトンを探索する実験は10日間実施された。残念ながら転換光の検出には至らなかったが、結果として実験手法は確立されたと言える。今後研究チームは、測定可能な周波数帯域を変えて、さらなる未踏の質量領域でダークマター探しを行う計画だ。

「ダークマター探索実験は、素粒子物理学においては盛んな分野の一つであり、かつ大規模化も進んでいます。そのため、なかなか世界に先だって探索を行うということは難しくはなっていますが、小規模な実験なりに世界で初めての探索が行えたことに喜びを感じています」(京都大学白眉センター 安達俊介さん)。

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