大質量星形成領域における不定間隔なアウトフロー

このエントリーをはてなブックマークに追加
ぎょしゃ座に位置する大質量星形成領域「AFGL 5142」の水メーザー観測から、同領域で起こっているアウトフローが不定間隔で発生しており、その間隔が10年程度から100年以上までと非常に幅広いことが明らかになった。

【2017年12月18日 国立天文台VERA

ぎょしゃ座に位置する「AFGL 5142」は、複数の星の赤ちゃん(原始星)が存在し、現在もなお活発な星形成活動が進んでいることで知られる大質量星形成領域だ。これまでの観測で、この領域では3方向に噴出する複数のアウトフロー(物質の流出)が確認されている。

AFGL 5142の中間赤外線3色合成図とアンモニア輝線の空間及び温度分布
(左)AFGL 5142の中間赤外線3色合成図。(右)アンモニア輝線の空間および温度分布。赤い部分はアウトフロー(白い矢印)により生成されたショックで暖められていると推定(提供:(左)NASA/IPAC Infrared Science Archive, Spitzer, IRAC、(右)Zhang, Q., et al., (2007), ApJ, 658, 1152)

VLBI欧州研究基盤コンソーシアム共同研究所(Joint Institute for VLBI European Research Infrastructure Consortium:JIVE)のRoss A. Burnsさんたちは、2014年4月~2015年5月にかけて計7回、国立天文台の電波干渉計VERAを用いてAFGL 5142の水メーザー観測を行った。この観測により、これまで曖昧だったAFGL 5142までの距離が6980光年と高精度に求められた。さらに、既知の水メーザーの内部固有運動に加え、新たな水メーザー成分の検出とその内部固有運動の計測にも成功した。

この成果から、AFGL 5142のアウトフローが不定間隔に噴出しており、その噴出間隔は短くて10年程度、長くて100年以上と非常に幅広いことが判明した。

不定間隔のアウトフローは軽い星の形成領域でよく見られるものだが、今回の観測から大質量星の形成領域においても見られることがわかった。原始星の成長に欠かすことのできないガスの質量降着も不定間隔の現象である可能性を示唆しており、大質量星が軽い星と同じ仕組みで形成・成長しているかもしれないという重要な観測結果である。

今後、VERAにより同じような天体が見つかれば、大質量星の形成と成長に対する統一的な理解が進展すると期待される。

関連記事