天の川銀河中心部の喧噪から、赤ちゃん星の産声
【2021年4月2日 アルマ望遠鏡】
天の川銀河の中心から1000光年の範囲には、星の材料となりうるガスや塵が大量に集まった「銀河中心分子雲帯」が広がっている。この領域には、銀河中心核の超大質量ブラックホールなどが引き起こす激しい乱流、強力な磁場、頻繁な超新星爆発など、ガスが収縮して星になるのを妨げる要素も多く、そのため材料が多くても星は誕生しにくいだろうと考えられてきた。実際、いて座B2という活発な星形成領域を例外として、銀河中心分子雲帯でこれまで観測されてきた星形成率は他の分子雲の10%程度である。
国立天文台のXing Luさんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を使い、銀河中心分子雲帯における星形成活動の実態を調べてきた。その過程で、銀河中心分子雲帯のいて座B2以外の領域で800を超える高密度のガス塊を発見している。これらのガス塊を詳しく調べたところ、生まれたての恒星である原始星から吹き出すガス流(アウトフロー)が43天体で検出された。アウトフローは言うなれば赤ちゃん星の産声であり、銀河中心部が、星が生まれ育つ上で従来考えられていたほどの悪い環境ではないということを示す結果である。
ただし、800個以上もの高密度ガス塊がありながら、そのうち43個でしか星が生まれている兆候が見つからなかったというのは、新たな疑問として残る。この点について研究チームでは、まだ観測が不十分であることを強調しつつ、本当にアウトフローが少ないのであれば、それはこの領域での星形成活動が始まったばかりだからだと結論づけている。「未発見のアウトフローがまだたくさん隠れている可能性がありますが、もしかしたら私たちは次の大きな『星のベビーブーム』の始まりを見ているのかもしれません」(Luさん)。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡:天の川銀河の中心部に「赤ちゃん星の巣」を発見
- The Astrophysical Journal:ALMA Observations of Massive Clouds in the Central Molecular Zone: Ubiquitous Protostellar Outflows 論文
〈関連リンク〉
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