太陽フレアの発生原因となる磁場構造を解明
【2012年11月6日 名古屋大学】
太陽表面の巨大爆発フレアが特定の磁場構造を前触れとして発生することが、シミュレーションや観測からわかった。名古屋大学などによるこの研究成果はフレアの発生条件の解明につながるとともに、地上のインフラにも影響を及ぼすフレアの予測実現に大きく貢献すると期待される。
太陽表面の巨大な爆発現象であるフレアは、黒点周辺に蓄積された磁場のエネルギーの一部が突発的に解放されて起こると考えられているが、その発生メカニズムは明確にはわかっていない。
名古屋大学太陽地球環境研究所の草野完也(くさのかんや)教授らの研究チームは、太陽フレアが太陽表面における「大規模な磁場のねじれ」と「小規模な磁場の変化」の相互作用を通して発生するという仮説に基づいて、大規模磁場のねじれ角と小規模磁場の回転角をそれぞれ変えてスーパーコンピューター「地球シミュレータ」によるシミュレーションを行い、フレアの発生パターンを探った。
その結果、ねじれた磁場中の小規模な磁場が「反極性(OP)型」または「逆シア(RS)型」と呼ばれる2パターンの特殊な構造で現れたときにフレアが発生することを見出した(画像1枚目)。
この予測を検証するために、日本の太陽観測衛星「ひので」がとらえた2006年と2011年の観測データなどを解析したところ、大規模フレア発生の数時間前に上記の2種類と一致する磁場構造が現れていたことがわかった(画像2枚目)。
今回の研究はフレアの発生条件となる磁場構造を世界で初めて特定したもので、フレア発生機構の解明に向けて大きく貢献する内容だ。太陽フレアやそれに伴う磁気嵐は地上の送電網や人工衛星、宇宙飛行士などにも影響を与える。こうしたフレアの発生や影響に関する宇宙天気予報を実現する上でも大きな研究成果である。