タイタンの大気中の窒素はどこから来たのか
【2014年6月26日 Phys.org】
土星の衛星タイタンにおける窒素同位体の存在比に着目した研究で、タイタンの大気に存在する窒素の起源はオールトの雲からやってくるような彗星が生まれる冷たい場所だろうという成果が発表された。生まれたての土星の周りにあった暖かい円盤中の物質でタイタンが作られたのではないということになる。
米・テキサス州サウスウエスト研究所のKathleen Mandtさんらの研究チームは、土星の衛星タイタンの元が、太陽系の歴史上初期段階に、ガスや塵から成る冷たい円盤の中で作られたことを示唆する研究成果を発表した。
研究チームでは、タイタンの元となった構成要素は現在のタイタン大気中にも残っていると考え、その大気中に大量に含まれる窒素の同位体(窒素14と窒素15)の存在比が、太陽系の歴史程度の時間では大きく変わらないことを示した。あまり変化しないため、他の天体と比較して窒素の起源を探ることができる。
土星探査機「カッシーニ」による探査の結果、タイタンと彗星では同位体比が似ていることが明らかになっている。また、かつてこの比の値は地球とも同じであると考えられていたが、実際には異なっていることが示され、地球の窒素の主な起源は彗星ではないという説を裏付けるものとなっている。
タイタンにおける同位体比は、カイパーベルトからの彗星のものよりもオールトの雲からの彗星のほうに似ているとMandtさんらは考えており、今回の研究成果がヨーロッパ宇宙機関(ESA)のロゼッタ・ミッションで支持されることになるかどうか、心待ちにしている。探査機「ロゼッタ」は今年後半にカイパーベルト天体の1つであるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を探査する。研究グループの説が正しければ、同彗星ではタイタンよりも低い同位体比(メタン氷中の水素のもの)が検出されるはずだということだ。
探査機の位置と航路
天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」では、「カッシーニ」や「ロゼッタ」など主な探査機の設定日時における位置や航路を表示することができます。