太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」打ち上げ

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日本時間12日夕方、太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が打ち上げられ、7年に及ぶ探査ミッションが始まった。探査機は最終的には太陽から600万kmまで近づき、太陽コロナや太陽風などを調査する。

【2018年8月13日 NASA

日本時間8月12日午後4時31分(米国東部夏時間同日午前3時31分)、米・フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から、太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」を搭載したデルタIVヘビーロケットが打ち上げられた。打ち上げから約40分後、探査機は太陽に向かう軌道に投入され、探査機の状態が良好で動作も正常であることが確認され、打ち上げは無事に成功した。「パーカー・ソーラー・プローブはこれから、極限の科学に挑む7年間のミッションを開始します」(米・ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理研究所 Andy Driesmanさん)。

パーカー・ソーラー・プローブの打ち上げ
「パーカー・ソーラー・プローブ」の打ち上げ(提供:NASA/Bill Ingalls)

パーカー・ソーラー・プローブの名前は、1958年に太陽風の存在を理論化した物理学者ユージン・パーカーに因んでいる。存命の研究者の名前が探査機名に付けられたのはNASAのミッションで初のことだ。

現地で探査機の打ち上げを見守るパーカーさん(提供:NASA/JHU Applied Physics Lab/Lee Hobson)

探査機は今後、まず金星に向かいながらアンテナの展開や磁力計の伸展などを行い、9月初めから約1か月間にわたって観測機器の試験を行う。その後、10月初めに金星の重力を利用した軌道調整を行う。この金星フライバイ(接近通過)によって、探査機は11月初めに太陽から約2400万kmまで接近する。この距離は太陽の高温大気であるコロナの内部にあたり、探査史上最も太陽に近づくものとなる。科学観測は12月からの予定だ。

7年間のミッションの間に探査機はあと6回の金星フライバイを行い、計24回太陽の近くを通り過ぎながら観測を行う。探査機は徐々に太陽へ近づいていき、最終的には太陽の表面から約600万kmまで接近する。このとき探査機の速度は時速約70万kmとなり、探査機史上最速の記録を打ち立てることになる。

太陽は私たちにとって最も近くにある恒星だが、まだ謎が多い。たとえば、太陽の表面温度は摂氏約6000度であるのに対し、数千km上空のコロナは200万度もの超高温であるという「コロナ加熱問題」の原因はわかっていない。また、太陽系に吹く超音速の太陽風の駆動源や、太陽から放出され光速の半分以上もの速度に達している高エネルギー粒子の加速メカニズムも謎だ。

研究者は60年以上もそれらの謎の解決に取り組んできたが、答えを得るにはコロナへ探査機を送る必要があった。コロナの高熱から探査機を防護する技術のおかげで、計画が実現したのである。「太陽コロナを探査機で調べることは、宇宙探査における最も難しい課題の一つでした。今回ついに、パーカーさんの名前を冠した探査機がコロナや太陽風の謎に挑みます。どんな発見があるのか、待ち遠しいです」(プロジェクトサイエンティスト Nicola Foxさん)。

ミッション概要の紹介動画(提供:NASA's Goddard Space Flight Center)