「ひさき」で探る、木星のX線オーロラと太陽風の関係

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木星のX線オーロラは、光速に近い速度のイオンが木星大気に衝突して発光すると考えられている。そのイオンの加速メカニズムに太陽風が大きく影響している可能性が高いことが、惑星分光観測衛星「ひさき」の観測などから示唆された。

【2016年3月24日 JAXA

木星のオーロラは地球のオーロラとは比べものにならないほど激しく大規模な現象で、多くの波長帯において地球のものの100倍以上明るく光っている。そのなかで、X線波長域で観測される木星のオーロラ(X線オーロラ)は、光速に近い速度の酸素や硫黄のイオンが木星大気に衝突して発光すると考えられている。

イオンが光速近くまで加速されるメカニズムは長年の謎となっているが、主に2つの仮説がある。一つは地球のオーロラと同様、太陽風の影響で加速されるというもの、もう一つは、木星の高速自転と木星自身が持つ磁場および木星の衛星イオから供給されるプラズマによって加速されるというものだ。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の惑星分光観測衛星「ひさき」は、NASAのX線天文衛星「チャンドラ」、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)のX線天文衛星「XMMニュートン」などと協力し、木星のオーロラを2週間にわたって観測した。

「ひさき」は太陽風との関連が強いオーロラを観測し、太陽風変動のタイミングとの関係を見積もった。また、チャンドラは木星直径を100分割できるほどの高解像度で観測し、X線オーロラの空間構造とその時間変化をとらえることに成功した。さらにXMMニュートンの分光観測からは、イオの火山ガスや太陽風に存在しうる酸素原子がX線を放射している事がわかった。

これらの観測結果を利用して、太陽風の変動とX線オーロラの発生場所や場所による違いなどを比較したところ、太陽風の速度と木星オーロラの強度が深く関わり合っていることが明らかになった。

さらに数値計算によって、X線オーロラを貫く磁力線は木星磁気圏と太陽風の境界面に繋がっていることがわかった。この結果は、X線オーロラが地球のオーロラと同様に、太陽風の影響でイオンが加速されて発生している可能性が高いことを示唆するものである。

木星極域のX線オーロラが、磁力線を介して木星の磁気圏とつながっているイメージ図
木星極域のX線オーロラが、磁力線を介して木星の磁気圏とつながっているイメージ図(提供:JAXA)

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