「はやぶさ2」の小型機「MINERVA-II2」に不具合
【2018年11月13日 JAXA】
「MINERVA-II2」は小惑星探査機「はやぶさ2」に搭載された3つの小型機ミッションの一つで、9月にリュウグウ表面への着地に成功した「MINERVA-II1」とともに、初代「はやぶさ」に搭載された「MINERVA」の後継として開発された。JAXAが主導して開発された「MINERVA-II1」に対して、「MINERVA-II2」は東北大学・東京電機大学・大阪大学・山形大学・東京理科大学が参加する「大学コンソーシアム」によって開発された探査機だ。来年7月ごろに「はやぶさ2」からリュウグウに向けて分離される予定となっている。
「MINERVA-II1」が2機のローバーで構成されているのに対して、「MINERVA-II2」は1機のローバー「Rover 2」からなる。サイズは直径15cm、高さ14.5cmで、質量は877gと、「MINERVA-II1」の「Rover 1A」(1151g)、「Rover 1B」(1129g) より軽い。
「MINERVA-II2」は「MINERVA-II1」と同じように機体をホップさせてリュウグウの表面を移動するが、工学実験ミッションとして、4大学がそれぞれ異なる4種類のホッピング機構を開発し、これらをすべて機体に内蔵しているのが大きな特徴となっている。その他、カメラや温度センサー、加速度センサーなどが搭載されている。
11月8日の記者説明会での報告によると、2014年12月の打ち上げ直後からこれまで3回にわたって、「はやぶさ2」の機上で「MINERVA-II2」の動作チェックが行われており、「はやぶさ2」と「MINERVA-II2」の間の通信は正常に行えることがわかっている。しかし、「MINERVA-II2」の中で各種のデータ処理を行うコンピュータの初期化が正しくできず、ローバーの状態を把握したり、カメラを含めた搭載機器を制御したりすることができない状況だという。
大学コンソーシアムの代表を務める東北大学大学院工学研究科の吉田和哉さんによると、「MINERVA-II2」の各コンポーネントを机上で接続して試験した時点では正常に動作していたものの、これらを実際の機体に組み込んだ後から問題が発生しており、配線の取り回しや電気的な環境が変わったことで不具合が起こった可能性が考えられるという。これまでの分析から、今後復旧する見込みは残念ながら少ないとのことだ。
吉田さんは、「たとえば山形大学のホッピング機構は電源なしで温度変化に応じて金属が伸び縮みして機体をホップさせる仕組みになっており、こうした機能は今回の不具合に関係なく動くことが期待できます。このように、正常に動作する部分を使って何らかの科学的成果を出せないかを現在検討しています」とコメントしている。
(文:中野太郎)
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