予想以上に隙間だらけのリュウグウ
【2020年3月19日 JAXA】
「はやぶさ2」が探査した小惑星リュウグウは「C型小惑星」と呼ばれる炭素質の小惑星である。こうした小惑星は46億年前の太陽系形成時の始原的物質を保持していると考えられており、探査やサンプルリターンによって太陽系初期の様子や惑星形成などに関する手がかりが得られると期待されている。
どのような物質がどのように集まってリュウグウが形成されたのかという天体の進化を調べるため、JAXA宇宙科学研究所の岡田達明さんたちの研究チームは「はやぶさ2」の中間赤外線カメラ(TIR)を用いてリュウグウの1自転分の連続撮影を実施し、史上初となるC型小惑星の全球撮像データを取得した。
まず、リュウグウの熱慣性を調べたところ、炭素質コンドライト隕石や地球の石と比べて非常に小さい値であることがわかった。熱慣性の小ささは、リュウグウの表面が温まりやすく冷めやすいということを示しており、予想外の結果だという。
モデル計算と詳しく比較すると、この熱慣性の小ささは、リュウグウが極めてスカスカ(高空隙)で凹凸が激しいことを表すものとわかった。また、岩塊と周辺土壌で観測された温度の日変化が小さく、両者の変化がほぼ同じことも明らかになった。岩塊と周辺土壌が熱的に同等の物質で多孔質であることを示しており、これも予想外の結果である。
TIRの観測では「コールドスポット」と呼ばれる、周囲より20度以上も温度が低い岩塊も複数発見された。これらの熱慣性は地球で発見された炭素質コンドライト隕石と同程度で、密度も同程度と推測されている。
以上の結果から岡田さんたちは、リュウグウの形成シナリオを次のように推測している。
- まず、ふわふわのダストが集まって成長する。
- 微惑星が形成される。この微惑星は密度が低く、スカスカな状態である
- さらに微惑星が成長し、高空隙であまり熱進化もしていなかったと思われる母天体が形成される。母天体の中心部はやや圧縮され密度が増大した可能性もある。
- 天体衝突により母天体が破壊される。母天体の外側の物質が飛散し、中央部の物質が露出する。
- 飛び散った岩塊が再度集積した「ラブルパイル天体」が形成される。大部分は高空隙な岩塊であり、その一部に圧密を受けたものも含まれて表面に露出する。TIRで発見された低温の岩塊はこの、圧密を受けた物質かもしれない(もしくは、母天体に衝突してきた天体が起源かもしれない)。
天体の自転は比較的速く、赤道付近が膨らんだ形状となる。 - その後、何らかの理由で自転が遅くなり、軌道も変化し、現在のリュウグウとなる。
隙間だらけのリュウグウは、原始太陽系でふわふわのダストから密度の高い天体が形成される途中過程を具現している天体かもしれない。地球のような岩石天体も同様の過程で成長すると考えられており、今回の成果はそうした過程の解明にもつながると期待される。
〈参照〉
- JAXA:隙間だらけの小惑星、リュウグウ
- 小惑星探査機「はやぶさ2」Twitter:TIRで撮影したリュウグウの昼間側の動画
- Nature:Highly porous nature of a primitive asteroid revealed by thermal imaging 論文
〈関連リンク〉
- 「はやぶさ2」:
- 星ナビ.com 「はやぶさ2」ミッションレポート
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