天の川銀河の大規模調査、ガイア第3期データの完全版公開
【2022年6月17日 ヨーロッパ宇宙期間】
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の位置天文衛星「ガイア」は、2013年の打ち上げ以来、全天サーベイ観測を行って天体の位置や地球からの距離などを測定し続けている。その目的は、これまでで最も正確で多元的な天の川銀河のマップを作ることだ。その成果をまとめたデータは、これまで3回にわたって公開されている。2020年12月の第3期データ初期リリース(EDR3)には18億個以上の天体の位置や明るさが含まれていた。
今回公開された第3期データ(DR3)はその完全版で、天体の分類や化学組成、温度、色、質量、年齢、視線速度などが追加されている。こうした情報は、同じくDR3に含まれる分光観測データによって明らかにされた。
DR3は恒星の化学組成に関する過去最大規模の一斉調査でもある。恒星に含まれる水素とヘリウムはビッグバンの時点から存在したのに対して、酸素や炭素など重い元素は恒星内部での反応で生成され、星の死によってまき散らされたものだ。つまり、恒星の化学組成からその由来がわかり、多くの星を調べれば天の川銀河の歴史もわかる。ガイアの観測データから、始原的な物質でできている星、太陽のように前世代の星によって供給された物質でできている星のほか、天の川銀河外を起源とする星も特定された。「天の川銀河は美しい星のるつぼです。この多様性は銀河の形成史を物語るものであり、重要です」(仏・コート・ダジュール天文台 Alejandra Recio-Blancoさん)。
さらにDR3のデータからは80万個以上の連星のカタログが作られたほか、1000万個の変光星、巨大分子雲、遠く離れたクエーサーや銀河の情報なども得られた。太陽系内についても15万6000個もの小惑星のデータがあり、太陽系の起源に対する理解を一層深めるために役立てられそうだ。
「ガイアは特定の天体を対象とする他のミッションとは異なり、サーベイ(天域の調査・測量)ミッションです。全天を何度もサーベイすることによって、他のミッションでは見逃してしまうようなものをガイアなら発見することが約束されているのです。天文学コミュニティが私たちの新しいデータに飛び込んできて、天の川銀河とその周辺について私たちが想像しうる以上に多くのことを発見してくれるのが待ちきれません」(ガイア・プロジェクトサイエンティスト Timo Prustiさん)。
〈参照〉
- ESA:Gaia sees strange stars in most detailed Milky Way survey to date
- Gaia Data Release 3 Papers 論文(特集号)
〈関連リンク〉
- Gaia
- European Space Agency, ESA YouTubeチャンネル:DR3に関わる動画
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