「はやぶさ2」は拡張ミッション「はやぶさ2♯」へ

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小惑星探査機「はやぶさ2」のプロジェクトが6月末で終了し、新たに2つの小惑星を目指す拡張ミッション「はやぶさ2♯」に引き継がれた。

【2022年7月5日 JAXAはやぶさ2プロジェクト

探査機『はやぶさ2』は2020年12月6日に地球に帰還し、小惑星リュウグウの試料を納めたカプセルを地球に向けて分離した後、新たに2つの小惑星「2001 CC21」「1998 KY26」を目指す「拡張ミッション」に入っている。

現在の「はやぶさ2」は地球から約2億1850万kmの位置にあり、1つ目の目標天体2001 CC21に向かって、6月28日からイオンエンジンの運転を開始したところだ。10月ごろまで運転を続けた後、2025年まではエンジンを使わない慣性飛行となり、2026年7月に2001 CC21へのフライバイ(接近通過)が行われる。その後は、2027年・2028年に地球でスイングバイをした後、2031年7月に2つ目の目標天体1998 KY26にランデブーする。

6月29日に行われた記者説明会では、リュウグウからのサンプルリターンという歴史的偉業をなし遂げた「はやぶさ2」プロジェクトが6月末をもって解散し、拡張ミッションへと引き継がれることが発表された。

プロジェクトメンバー
拡張ミッション「はやぶさ2♯」のロゴマークを発表する「はやぶさ2」プロジェクトの皆さん。左から、三桝裕也さん、吉川真さん、津田雄一さん、渡邊誠一郎さん(撮影:アストロアーツ)

これに合わせて、拡張ミッションの愛称を「はやぶさ2♯」(はやぶさ2シャープ)とすることも発表された。「♯(SHARP)」は “Small Hazardous Asteroid Reconnaissance Probe”(地球に脅威のある小型小惑星の偵察探査機)の略語であると同時に、拡張ミッションがリュウグウ探査に続く挑戦的ミッションとなることや、「さらに一段上のミッションを目指す」という意味も込められている。

ロゴマーク
「はやぶさ2♯」のロゴマーク。探査機の背景にある4個の星が「♯」を表す。この星は4本の軌道とともに、「はやぶさ2」探査機の運用・「はやぶさ2」「OSIRIS-REx」サンプルの共同分析・「OSIRIS-REX」サンプルを受け入れるキュレーション活動・科学成果の発信という4つの活動を象徴している(提供:JAXA)

これまでの「はやぶさ2」プロジェクトはJAXA本体の直轄プロジェクトだったが、「はやぶさ2♯」はJAXA宇宙科学研究所管轄のプロジェクトとなる。これまでプロジェクトマネージャを務めた津田雄一さん(JAXA宇宙研教授)は「はやぶさ2♯」のチーム長に就任して、プロジェクト全体を統括する。探査機運用のリーダーには、「はやぶさ2」で航法誘導制御を担当した三桝裕也さん(JAXA宇宙研主任研究開発員)が就任する。

2015年4月に前任の國中均さん(現JAXA宇宙科学研究所長)から「はやぶさ2」プロジェクトマネージャを引き継いで以来、7年にわたってプロジェクトを率いた津田さんは、「大きなひと区切りで、ここまでやり遂げたことに満足しています。チームメンバーや「はやぶさ2」をサポートしていただいた皆様に本当に感謝しています。よい組み合わせ、よい縁があってここまでやってこれた。やり切った寂しさもありますが、探査機がまだ残っていることは自慢です。さらに新しい成果を挙げて欲しい」と語った。

成功基準
打ち上げ前に策定された「はやぶさ2」の成功基準(サクセスクライテリア)とその達成状況。理学・工学の両分野で、完全成功(フルサクセス)を超える「エクストラサクセス」を達成したとJAXA内の審査で認定された。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA)

「はやぶさ」初号機が通信途絶などのトラブルに見舞われていた2006年に「はやぶさ2」構想を立ち上げ、2012年9月まで初代プロジェクトマネージャを務めた後、ミッションマネージャとして「はやぶさ2」に関わった吉川真さん(JAXA宇宙研准教授)は、「当初はなかなか提案が通らず、予算も付かなかったが、『C型小惑星は絶対に面白い』という信念でやってきた。結果的にこのような成果を挙げることができ、信念が正しかったことが証明された。ここまでできたのは、素晴らしいプロジェクトメンバーに恵まれたことと、多くの方に応援していただいたこと、全てが噛み合ったから。サクセスクライテリアの緑色(達成した項目)がたくさん並んでいるのを見ると本当に嬉しく思います」と語った。

「はやぶさ2♯」で探査機運用を担う三桝さんは、「プレッシャーは感じているが、拡張ミッションという延長戦を戦えることは夢のように感じています。これも、ここまで関わってくださった開発・運用メンバーと応援してくださった多くの方々のおかげと思っています。「はやぶさ2」はすでに設計寿命を迎えていて、いつ何が起こってもおかしくない状況は今後もずっと続きます。そういう「はやぶさ2」と探査の旅を続けられる一日一日の幸せをかみしめながら、着実に運用を続けていきたい。少しでも長くいいニュースを届けられるように全力を尽くしたい」と語った。

プロジェクトでは、「はやぶさ2」のミッションをまとめた動画と「はやぶさ」初号機のミッションを振り返る動画を新たに公開している。どちらもYouTubeで視聴できる。

はやぶさ2 -2195日の軌跡-(提供:JAXA)

小惑星探査機はやぶさ -60億kmの旅を振り返る-(提供:JAXA)

〈参照〉

〈関連リンク〉

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