恐竜絶滅の要因は小惑星の「当たりどころ」
【2017年11月14日 東北大学】
約6600万年前、現在のメキシコ・ユカタン半島に直径10km程度の小惑星が衝突した。東北大学の海保邦夫さんと気象庁気象研究所の大島長さんは、この衝突で生じた「すす」が成層圏中に放出されて地球全体を取り巻くことで、地上や海上に届く太陽光が遮られ、地上気温と海水温の低下などを引き起こし、恐竜などの生物大量絶滅につながったとする研究成果を昨年発表した。
海保さんは、絶滅の決め手はすすの元となる堆積岩中の有機物の量であると考え、当時の地球上における堆積岩中の有機物量を調べた。そして、その量は場所によって3桁も異なること、少ない量の地域が大部分を占めることを突き止めた。
有機物の量が少ない地域に小惑星が衝突すると放出されるすすの量も少なくなり、気温低下も小さくなる。大島さんは気象研究所の気候モデルによる計算で、成層圏中のすす量に応じた気候変動を調べた。これを元に、すす量と気温の低下量の関係を用いて、6600万年前に大量絶滅が起こるのは下図のオレンジ色の範囲(地球表面の13%の範囲)に小惑星が衝突した場合であると結論づけた。
これらの地域は当時の海の縁辺域だったところだ。海の縁辺域は一般に生物生産が盛んに行われているために有機物が濃い堆積物が多く、また地下には過去40億年の間に海や湖水で堆積した堆積岩があり、その中に生物が残した有機物が大量に含まれているため堆積岩も厚くなる。
こうした場所に小惑星が衝突すると、衝突の熱で有機物の一部から大量のすすが生成され、地球全体の月平均気温が8度から11度ほど低下すると推定される。まさにこれが、大量絶滅が起こるケースだ。
一方、有機物の量が少ない海洋などの地域に小惑星が衝突した場合の気温低下は0度から4度と推定され、この場合には大量絶滅は起こらないと考えられる。直径10km程度の小惑星による衝突が常に大量絶滅を引き起こすとは限らない、むしろ確率的には小さかったということを示す結果であり、小惑星の当たりどころが(現在の生物にとって)悪ければ、生命史が変わって今でも恐竜の世界が続いていた可能性があるということだ。
今後は、過去未来にかかわらず、天体衝突によってどのくらいの規模の寒冷化がどのくらいの頻度で起こるのかについて解明されることが期待される。また、今回の研究では気候モデルに関しても多くの知見が得られており、大規模火山噴火が起こった際の気候影響評価や、過去に発生したことが示唆されている大規模火山噴火に伴う大量絶滅の際の気候変動についても明らかにできると期待される。
〈参照〉
- 東北大学:小惑星衝突の「場所」が恐竜などの大量絶滅を招く-衝突場所により、すすが引き起こす気候変動の規模に変化-
- Scientific Reports:Site of asteroid impact changed the history of life on Earth: the low probability of mass extinction 論文
〈関連リンク〉
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