2017年 天文宇宙ゆく年くる年
【2017年12月28日 アストロアーツ】
※ 発売中の「星ナビ」1月号「星のゆく年来る年」では、2017年のできごと、2018年の注目現象を写真つきで詳しく紹介しています。
2017年最も多くの人をにぎわせた天文現象は8月21日(米国時間)のアメリカ横断日食だろう。アメリカ本土を北西から南東にかけて横断する皆既帯を目指し、アメリカ国中、そして世界中から人々が押し寄せ、車道が大渋滞するようすは日本のメディアでも紹介された。日本からも多くの日食ファンが遠征し観測や撮影に成功している。
太陽の“お騒がせ”は日食にとどまらず、9月上旬には11年ぶりとなる最強クラスのフレアが観測された。磁気嵐によるトラブルの懸念や「北海道でオーロラが見られるかも?」という一部での期待は外れたが、北極圏などで活発なオーロラが見られた。
ここからは主な話題を時系列で振り返ろう。
2月、みずがめ座の赤色矮星「TRAPPIST-1」の周囲に地球サイズの惑星が7つ発見されたことが発表された。1つの星の周りに地球サイズの惑星がこれほど多く見つかったのは初めて、しかも7つのうち3つはハビタブルゾーン内に位置しているということで、生命に適した惑星が存在する可能性に大きな関心が寄せられた。
9月には、水・金・火の3惑星集合が明け方の空を彩った。3連休にはあいにくの台風が到来したが、台風一過の空で細い月も加わるようすを楽しめた地域も少なくなかった。
9月15日、NASAの探査機「カッシーニ」が土星の大気に突入して消滅し、役目を終えた。1997年に打ち上げられたカッシーニは2004年から土星周回探査を行い、環の中で生まれる小衛星や、衛星エンケラドスの間欠泉、また子機ホイヘンスが着陸した衛星タイタンの地表のようすなど、人類が初めて目のあたりにする光景を送り届けてくれた。
「カッシーニ」が眠りについた土星は、今年10月17日に最も環が開いた姿を見せた。地球から見た傾きの角度は年々変わり、次に最も環が開くのは約15年後だ。
10月3日に発表されたノーベル賞物理学賞は大方の予想通り「重力波」に関する研究が受賞。直後には、中性子星同士の合体で発生した重力波の検出と、発生源の電磁波での観測が発表されるなど、すでに重力波天文学は大きな歩みを踏み出している。
10月、太陽系外からやってきたとみられる天体が史上初めて観測され、「オウムアムア」と名付けられた。オウムアムアは今年9月から10月にかけて太陽および地球に最接近通過し、太陽系外へと飛び出すような猛スピードで遠ざかっているが、観測データから天体の起源や組成などが明らかになると期待される。
12月19日、宇宙飛行士の金井宣茂さんが自身初のミッションとなる国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在を開始した。医師としての知見を活かし、アルツハイマー病などの原因究明のための実験、タンパク質結晶生成実験などを行う。
8月8日の部分月食や8月中旬のペルセウス座流星群など、国内で見られる天文イベントはあまり天気に恵まれなかった印象だが、12月中旬のふたご座流星群はさえざえとした夜空に明るい流れ星がたくさん現れ、うっぷんを晴らしてくれた。
2017年の訃報
- ユージン・サーナン 氏(1月16日。82歳)
米宇宙飛行士。アポロ17号に搭乗し、現時点で最後の月面着陸を果たした(関連ニュース)。 - リチャード・F・ゴードン Jr. 氏(11月6日。88歳)
米宇宙飛行士。アポロ12号に搭乗し、司令船パイロットを務めた。 - ブルース・マカンドレス 氏(12月21日。80歳)
米宇宙飛行士。スペースシャトル「チャレンジャー号」に搭乗し、初の命綱なしでの宇宙遊泳を行った。
改めてその業績を偲び、哀悼の意を表します。
2018年は皆既月食、火星大接近に注目
2018年は皆既月食に注目。1月31日と7月28日の2回、全国で赤い満月を目にすることができる珍しい年だ。
7月31日には火星が2年2か月ぶりの地球最接近。とりわけ今回は5800万kmまで近づく、2003年以来の大接近となり、マイナス2.8等級で輝く様子を見られる。天体望遠鏡で極冠や大シルチスなど表面の模様を観察してみよう。
2014年に地球を出発した小惑星探査機「はやぶさ2」はいよいよ2018年6~7月、目標天体「リュウグウ」に到着する。1年半という期間で多岐にわたる探査が予定されており、太陽系の過去の記憶を紐解く「玉手箱」の中身を楽しみにしたい。
また2019年5月には改元が予定されているので、「(日本の空で見られるものとしては)平成最後の月食」「平成最後のふたご座流星群」なんて盛り上がってみるのも一興だ。
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アストロアーツの2017年
日食シミュレーションソフトに撮影機能が追加された「エクリプスナビゲータ3」を発売、8月のアメリカ皆既日食で活用していただきました。天体画像処理ソフト「ステライメージ」の最新版Ver.8では、画像ファイルを指定するだけで最初のコンポジット処理をボタンひとつでできる「自動処理モード」が好評です。月刊「星ナビ」はご要望の多かった電子版がいよいよ配信開始しました。
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