2025年 天文宇宙ゆく年くる年

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月食やレモン彗星、恒星間天体などが注目を集めた、天文・宇宙分野の2025年を振り返ろう。また、2026年に注目したい天文現象も紹介する。

【2025年12月29日 アストロアーツ】

※ 現在販売中の「星ナビ」1月号「星のゆく年くる年」では、2025年に話題となった天文・宇宙のトピックや2026年の注目の天文現象を写真つきで詳しく紹介しています。

「星ナビ」2026年1月号

1~3月

1月8日、日本と欧州の水星探査機「ベピコロンボ」が、軌道修正のため最後の水星スイングバイを行った。水星周回軌道への投入は2026年11月の予定だ。

水星表面:プロコフィエフクレーターなど
探査機が787kmの距離から撮影した水星表面。プロコフィエフ、カンディンスキー、トールキン、ゴーディマーの各クレーターや、ボレアリス平原、アンリクレーター、リズマークレーターが見られる。画像クリックで表示拡大(提供:ESA/BepiColombo/MTM)

1月12日、2年2か月ぶりに火星が地球に最接近した。今回は最接近距離が約9608万kmの「小接近」で、視直径は14.6秒角にとどまった。

火星 2025.01.13(UT)
火星 2025.01.13(UT)(撮影:hiroARAIさん)。画像クリックで天体写真ギャラリーのページ

1月、すばる望遠鏡の主焦点に新たな主力観測装置「超広視野多天体分光器(PFS)」が装備され、2月から本格稼働を開始した。

2月、2024年12月に発見された小惑星「2024 YR4」(直径約60m)が2032年12月22日に約1%の確率で地球に衝突するとの予測が発表された。衝突確率は最大で3.1%まで上昇したが、のちの観測でほぼゼロとなった。

2月、NASAの探査機「OSIRIS-REx」が持ち帰った小惑星ベンヌの試料から、アミノ酸や核酸塩基など、生命の材料となる多くの分子が検出された。12月にはリボースやグルコースなど6種類の糖も検出された

ベンヌ試料と検出された有機成分の概念図
オシリス・レックスの採取ヘッド(画像中央)内のベンヌ試料と、検出された有機成分の概念図。上右側から時計回りに、塩と粘土鉱物、核酸塩基、アミノ酸、前駆体分子。画像クリックで表示拡大(提供:NASA)

2月10日、北海道から山陰、九州北部で火星食が見られた。ただし非常に低空での現象だったため条件は良くなかった。

2月、日本のX線分光撮像衛青「XRISM」の観測で、ケンタウルス座銀河団の高温ガスが揺れ動く運動が見つかった。銀河団ガスが高温に保たれている謎を解く手がかりになりそうだ。

ケンタウルス座銀河団中心部のX線スペクトル
XRISMの「Resolve」で得られたケンタウルス座銀河団中心部のX線スペクトル。背景はX線天文衛星「チャンドラ」が撮影した同じ領域のX線画像(提供:JAXA)

3月、ケンタウルス座アルファ星系に次いで太陽に近いバーナード星で、3個の系外惑星が新たに発見された。

3月、宇宙飛行士の大西卓哉さんが米国・ロシアの3名の飛行士とともに「Crew-10」ミッションで国際宇宙ステーション(ISS)に到着し、第73次長期滞在を開始した。4月には日本人宇宙飛行士で3人目となるISS船長に就任した

到着を喜び合う大西さん
迎えてくれたISS長期滞在クルーとハグを交わす笑顔の大西さん(提供:JAXA/NASA)

3月、土星の衛星が新たに100個以上追加され、計274個となった

1~3月は民間企業の月着陸への挑戦が相次いだ。1月15日には、日本のispaceによる「HAKUTO-R ミッション2」の月着陸機「レジリエンス」と、米ファイアフライ・エアロスペースによる「ブルーゴースト ミッション2」の着陸機が相乗りで打ち上げられ、2月28日には米インテュイティブ・マシーンズによる「IM-2」ミッションの着陸機「Nova-C アテナ」が日本のダイモン社の月ローバー「ヤオキ」とともに打ち上げられた。レジリエンスは2月15日に民間の商業用月着陸機として初めて月フライバイに成功した

月着陸船「レジリエンス」の打ち上げと分離
(上)月着陸船「レジリエンス」の打ち上げ、(下)レジリエンスの分離(提供:SpaceX

アテナ
アテナ。金色の俵型に見える輸送ケースに「ヤオキ」が格納されている(提供:Intuitive Machines

ブルーゴーストの着陸機は3月2日に民間で史上2番目となる月面着陸に成功し、3月17日まで活動した。3月7日にはNova-C アテナも月着陸に成功したものの、機体が横転して太陽電池の発電量が足りず、翌8日に活動終了となった。ヤオキは格納ケースから分離されない状態で撮影や車輪の回転動作を行い、日本の民間機として初の月面到達・稼働を達成した。

ブルーゴーストが撮影した画像
着陸後にブルーゴーストが撮影した画像。(左)着陸後に最初に取得した1枚。月の表面と着陸船のRCSスラスター(中央)がとらえられている(右側の青白っぽい部分は太陽光が入ったことによる白飛び)。(右)月面上に映るブルーゴーストの影と地平線上の地球。画像クリックで表示拡大(提供:Firefly Aerospace

4~6月

4月、スペースXが民間宇宙ミッション「Fram2」のクルードラゴン宇宙船を打ち上げ、史上初めて有人での極軌道周回飛行に成功した。

4月13日から10月13日まで、大阪市の夢洲で大阪・関西万博が開催された。アメリカパビリオンではアルテミス計画の体験展示やアポロ17号が持ち帰った月の石の展示などが行われ、日本パビリオンでは火星隕石、中国パビリオンでは嫦娥6号が持ち帰った月の裏側の石などが展示されて人気を博した。

アメリカパビリオン
(左)展示の最後にあるのが目玉でもある「アポロの月の石」。今回は「アポロ17号」の月の石で55年前の石とは別物。(右)横3画面+上1画面での映像が楽しめる「Cube」でのロケットの打ち上げの様子。地球を離れ、月や惑星、他の銀河へと旅していくストーリー。映像の中では探査機や宇宙望遠鏡なども登場、見るところが多くて目が追いつかない!

4月、NASAの小惑星探査機「ルーシー」がメインベルト小惑星「ドナルドジョハンソン」への接近観測を行った

ドナルドジョハンソン
約1100kmの距離から撮影されたドナルドジョハンソン(提供:NASA/Goddard/SwRI/Johns Hopkins APL/NOIRLab)

5月、木星の2つの新衛星が登録され、木星の衛星は97個となった

5月7日、ispaceの「HAKURO-R ミッション2」で月着陸機「レジリエンス」が月周回軌道に投入成功した。6月6日に月面への降下を行ったが、高度20kmまで降下した後に通信が途絶し、月着陸には失敗した

月周回軌道上でレジリエンスが撮影した月面
月周回軌道上でレジリエンスが撮影した月面。画像右下にレジリエンスの着陸脚と小型月面探査車「テネシアス(Tenacious)」を保護するカバーが写っている(提供:ispace

5月7日、土星の環が消失する現象が見られた。太陽が土星の赤道面上に位置し、環の真横から太陽光が当たることで環が見えなくなった。

土星 2025/05/14
土星 2025/05/14(撮影:佐々木一男さん)。画像クリックで天体写真ギャラリーのページ

5月7日、2023年10月から始まった「プラネタリウム100周年」イベントがグランドフィナーレを迎えた。各国のプラネタリウムをつなぐ国際オンラインイベントが行われ、5月24日には国内プラネタリウムのリレー配信イベントも行われた。

5月、劇場版「名探偵コナン 隻眼の残像」が公開され、映画の舞台となった国立天文台野辺山宇宙電波観測所の見学者が急増した。

5月、2010年に金星探査機「あかつき」とともに打ち上げられたJAXAの小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」が、15年にわたる運用を終了した

セイルを展開・展張した「イカロス」とミッションシーケンス
(上)2010年6月14日に超小型分離カメラがとらえたセイルの展開・展張後の「イカロス」(提供:JAXA)。(下)「イカロス」のミッションシーケンス(提供:JAXA

5月、中国が小惑星探査機「天問2号」を打ち上げた。地球に近い軌道を公転する小惑星Kamoʻoalewa(カモウオウアレバ、カモオアレワ)からのサンプルリターンを行い、さらに311P/パンスターズ彗星にも接近観測をする計画だ。

天問2号の想像図と航行経路
(上段)「天問2号」の想像図、(下段)「天問2号」の航行経路(提供:国家航天局

6月、ホンダの再使用型ロケット実験機が高度300mまで上昇後、垂直着陸に成功した。国内の民間企業では初となる。

再使用型ロケットの実験機の離着陸の様子
再使用型ロケットの実験機の離着陸の様子(提供:株式会社本田技術研究所)

6月、全米科学財団と米エネルギー省科学局が運営するチリのベラ・C・ルービン天文台が稼働し、初観測画像が公開された。口径8.4mの光学赤外線望遠鏡と32億画素ものカメラを使い、全天のサーベイ観測を行う。

星雲
いて座の三裂星雲(M20)と干潟星雲(M8)。7時間強の観測で撮影された678枚の画像を合成(提供:Rubin Observatory)

6月29日、H-IIAロケットの最終号機となる50号機が打ち上げられ、温室効果ガス・水循環観測技術衛星「いぶきGW」が軌道に投入された。

「いぶきGW」の打ち上げ
「いぶきGW」の打ち上げ(提供:MHI Launch Service

7~9月

7月1日、チリの「小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)」によって、史上3個目となる恒星間天体「3I/アトラス彗星」が発見された。離心率eが6を超える極端な双曲線軌道で、直径約20kmと推定されている。10月29日に太陽から1.35auの距離で近日点を通過し、12月19日には地球に1.79auまで接近した。

アトラス彗星 12月18日撮影のアトラス彗星(撮影:アストロアーツ 上山治貴)。彗星を止めた表現のため、背景の恒星が線になる。画像クリックで表示拡大
撮影データ:2025年12月18日 3時54分~4時53分/露出300秒×12枚/ビクセン ED81S+ZWO ASI294MC(-10度冷却)/タカハシ EM-200 Temma2M/ステラショット3でメトカーフガイド、ステライメージ10で画像処理

7月、米・ハワイのジェミニ北望遠鏡を使った観測で、オリオン座の1等星ベテルギウスに伴星らしき像が検出されたと発表されて話題となった。確実に発見と言える確度ではなく、今後の追観測が待たれる。

7月、米国の重力波望遠鏡「LIGO」によって2023年11月に観測史上最も重いブラックホール連星の合体による重力波イベント「GW231123」が検出されたと発表された。137太陽質量と103太陽質量のブラックホールが合体して225太陽質量のブラックホールができたと推定されている。

GW231123の解説図
重力波イベント「GW231123」の特徴を解説した図。画像クリックで表示拡大(提供:Simona J. Miller / California Institute of Technology / 翻訳:Shio Sakon)

7月、北海道大学の研究チームが「はやぶさ2」の持ち帰った小惑星リュウグウの試料を分析し、太陽系最古の岩石として知られる「CAI」を試料中から発見した。年代測定により、このCAIの形成年代は45億6730年前と推定された。

リュウグウ試料とCAI
今回分析したリュウグウ試料と、そこに含まれていたCAIの電子顕微鏡画像。赤がマグネシウム、緑がカルシウム、、青がアルミニウムの存在する場所を示す(提供:Kawasaki et al. 2025

8月1日、油井亀美也宇宙飛行士ら4名を乗せたNASAの「クルー11」ミッションが打ち上げられ、翌2日にISSに到着した。油井さんは第73/74次長期滞在のクルーとして約6か月間、ISSに滞在する予定だ。8月9日には長期滞在を終えた大西卓哉飛行士ら4名がISSを離れ、翌10日に地球に帰還した

ウェルカムセレモニー
ウェルカムセレモニーを終えて笑顔で手を振るISS滞在クルー。油井さんは「温かい歓迎ありがとうございます。クルー11のメンバーは最高です。皆さんと働くことを楽しみにしています」と話した

8月、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測で天王星の新衛星が見つかり、計29個となった。JWSTが太陽系の惑星で衛星を発見したのはこれが初めてだ。

S/2025 U 1
JWSTの近赤外線カメラ「NIRCam」がとらえた、天王星と環、13個の衛星と新衛星「S/2025 U 1」(提供:NASA, ESA, CSA, STScI, M. El Moutamid (SwRI), M. Hedman (University of Idaho))

8月、ヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLT望遠鏡で、太陽に似た若い星の原始惑星系円盤のすき間を公転する系外惑星「WISPIT 2 b」が発見された。質量は木星の4.9倍、主星からの距離は海王星軌道の約2倍と推定されている。

WISPIT 2 b
VLT望遠鏡で撮影された惑星「WISPIT 2 b」(星周円盤のすき間の中に見える光点)。波長1.6~2.2μmの近赤外線で撮影。中心星は遮蔽されている(提供:ESO/R. F. van Capelleveen et al.)

9月8日の深夜から早朝にかけて、3年ぶりに全国で皆既月食が見られた。全国的に晴天に恵まれた。

2025年9月8日の皆既月食
2025年9月8日の皆既月食(撮影:owlさん)。画像クリックで天体写真ギャラリーのページ

9月、JAXAの金星探査機「あかつき」の運用が終了した。2010年に打ち上げられたがエンジンの破損によって金星軌道投入の予定が遅れ、2015年に金星周回軌道に入って8年以上にわたり観測を行った。2024年から通信が確立できない状況が続き、復旧が見込めないことから運用終了となった。

10~12月

10月、遠方の銀河の像が重力レンズ効果で変形した「アインシュタインリング」の「くびれ」から、リングの手前に未知の天体が見つかった。天体の質量は約100万太陽質量と推定されていて、光では観測できない謎の天体だ。

JVAS B1938+666
リング状の重力レンズ天体「JVAS B1938+666」。白黒画像は赤外線、カラー画像は電波で得られた画像。今回、リング上の2時方向付近の位置に「見えない天体」が見つかった。2012年には12時方向付近のリング上にも「見えない天体」が発見されている(提供:Keck/EVN/GBT/VLBA)

10月、日本の新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」初号機がH3ロケット7号機で打ち上げられ、ISSに結合された。HTV-Xは先代の補給機「こうのとり」の約1.5倍の輸送能力を持ち、ISS離脱後も最長で1年半にわたり地球を周回して各種の実験などに活用できる。

H3ロケット7号機の打ち上げ
H3ロケット7号機の打ち上げ(提供:JAXA

1月3日にレモン山サーベイで発見されたC/2025 A6 レモン彗星が、10月から11月にかけて肉眼彗星となった。地球に最接近した10月下旬には4等台まで明るくなり、各地で観測された。

C/2025 A6レモン(20251028)
C/2025 A6レモン(20251028)(撮影:artemisさん)。画像クリックで天体写真ギャラリーのページ

11月、NASAの火星探査ミッション「エスカペイド」の探査機2機がブルーオリジンの大型ロケット「ニューグレン」で打ち上げられた。エスカペイドは地球に近い軌道を1公転した後で火星軌道に遷移する初の火星探査機で、2027年9月に火星に到着予定だ。また、ニューグレンは今回が2度目の打ち上げで、同機として初めて第1段ブースターが洋上の回収船に自律帰還した。ロケットの自律帰還に成功した民間企業はスペースXに次ぐ2社目となる。

火星探査機「ブルー」と「ゴールド」
エスカペイドの双子の火星探査機「ブルー」と「ゴールド」の想像図(提供:Rocket Lab

11月、理化学研究所の研究チームがスパコン「富岳」を使い、3000億個の粒子からなる天の川銀河のシミュレーションに成功した。銀河内の超新星爆発の計算をAIによる予測モデルで置き換える手法を活用し、現実の銀河の恒星数とほぼ同じ規模の計算を実現した。

銀河のガス分布
シミュレーションで得られた、ある時刻の銀河のガス分布(左:銀河円盤を上から見たところ、右:円盤を真横から見たところ)。明るい色の部分ほど密度が高い(提供:Hirashima et al. (2025)

11月、東京大学の戸谷友則教授がNASAのガンマ線観測衛星「スウィフト」のデータを解析し、天の川銀河を取り巻くハロー状のガンマ線放射を発見したと報告した。ダークマターの正体と予想されている未知の素粒子「WIMP」の対消滅で出るガンマ線と特徴が一致しており、ダークマターの痕跡を発見した可能性があると話題になった。

ハロー状のガンマ線放射
今回発見された、天の川銀河を取り巻くハロー状のガンマ線放射。銀経は銀河中心から銀河面に沿った方向に測った経度、銀緯は銀河面から垂直に測った緯度。中央の灰色の帯部分には天の川銀河の銀河面があり、解析からは除かれている(提供:東京大学大学院理学系研究科リリース)

11月25日、土星の環がほぼ地球の真横を向き、ほぼ見えなくなる現象が起こった。完全な消失ではなかったものの、2025年の土星環消失の中では最も見やすい条件となった。

土星の環の傾きの変化 (2017-2025)
土星の環の傾きの変化 (2017-2025)(撮影:T-HASHIGUCHIさん)。画像クリックで天体写真ギャラリーのページ

12月、準天頂衛星「みちびき」5号機を載せたH3ロケット8号機が打ち上げられたが、第2段エンジンが予定より早く燃焼終了するトラブルが発生し、衛星の軌道投入に失敗した。現在も原因究明が続いているが、衛星を格納しているフェアリングを分離したタイミングで第2段に何らかの異常が生じたらしいことが明らかになっている。

H3ロケット8号機の打ち上げ
H3ロケット8号機の打ち上げ(提供:JAXA)

2025年の訃報

  • アリシア・ソダーバーグ(1月22日、47歳)
    アメリカの天文学者。超新星を研究。
  • 平山淳(3月5日、90歳)
    東京大学名誉教授、国立天文台名誉教授、明星大学教授。太陽コロナ・フレアの研究に従事。
  • エレミア・オストライカー(4月6日、87歳)
    アメリカの天体物理学者。渦巻銀河の安定性の研究などで知られる。
  • スヴェトラナ・ゲラシメンコ(4月8日、80歳)
    旧ソ連・タジキスタンの天文学者。67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を発見。
  • クリシュナスワミ・カストゥリランガン(4月25日、84歳)
    インドの宇宙工学者。インド宇宙機関(ISRO)所長を務めた。
  • ジェレミー・バーンシュタイン(4月20日、95歳)
    アメリカの理論物理学者。1950年代に核推進ロケットの研究プロジェクト「オリオン計画」に従事。
  • 西田篤弘(5月17日、89歳)
    JAXA宇宙科学研究所名誉教授。地球磁気圏の研究に従事、宇宙科学研究所所長などを歴任。
  • ジャヤント・ナーリカー(5月20日、86歳)
    インドの天体物理学者。フレッド・ホイルらとともに準定常宇宙論を提唱。
  • 田原博人(5月30日、88歳)
    電波天文学者。日本天文学会理事長、宇都宮大学学長などを歴任。
  • 小暮智一(5月22日、98歳)
    京都大学名誉教授。輝線星の研究などに取り組み、日本天文学会理事長、美星天文台名誉台長などを歴任。
  • 松本紘(6月15日、82歳)
    宇宙電波工学者。京都大学名誉教授。京都大学総長、理化学研究所理事長などを歴任。
  • フレッド・エスペナク(6月1日、73歳)
    アメリカの天文学者。日食予報の計算で知られる。
  • マーク・ガルノー(6月4日、76歳)
    カナダの宇宙飛行士。カナダ初の宇宙飛行士としてスペースシャトルに3回搭乗。カナダ宇宙庁(CSA)長官、外務大臣、運輸大臣を歴任。
  • フランシス・グレアム=スミス(6月20日、102歳)
    イギリスの電波天文学者。グリニッジ天文台長、王室天文官を歴任。
  • イッコ・イベン(6月11日、94歳)
    アメリカの天文学者。恒星進化論の研究で知られる。
  • 五代富文(7月24日、92歳)
    宇宙工学者。宇宙開発事業団(現JAXA)でH-IIロケットの開発を主導、同事業団副理事長などを歴任。
  • ライナー・ワイス(8月25日、92歳)
    アメリカ(ドイツ出身)の物理学者。キップ・ソーンらとともに重力波望遠鏡「LIGO」のプロジェクトを主導し、2017年にノーベル物理学賞を受賞。
  • タルガット・ムサバイエフ(8月4日、74歳)
    カザフスタンの宇宙飛行士。ソ連の宇宙ステーション「ミール」に2回、国際宇宙ステーションに1回滞在。
  • ジム・ラヴェル(8月7日、97歳)
    アメリカの宇宙飛行士。ジェミニ7・12号、アポロ8・13号に搭乗。
  • 佐藤文隆(9月14日、87歳)
    理論物理学者。京都大学名誉教授。一般相対性理論の「冨松・佐藤解」の導出で知られる。京都大学基礎物理学研究所所長などを歴任。
  • ジョージ・スムート(9月18日、80歳)
    アメリカの宇宙物理学者。宇宙マイクロ波背景放射(CMB)観測衛星「COBE」のプロジェクトを主導してCMBの温度ゆらぎを発見、2006年にノーベル物理学賞を受賞。
  • ジュリエッタ・フィエロ(9月19日、77歳)
    メキシコの天文学者。星間物理学、太陽系科学を専門とし、多数の科学書の執筆、博物館・天文台の設立など科学コミュニケーション活動に従事。
  • カール・アウグステセン(9月29日、80歳)
    デンマークの天文学者。小惑星を6個発見。
  • 楊振寧(10月18日、103歳)
    アメリカ(中国出身)の物理学者。李政道とともに弱い相互作用のパリティ保存則の破れを予言。素粒子物理学の標準模型の基礎となる非可換ゲージ理論(ヤン=ミルズ理論)を確立。1957年にノーベル物理学賞を受賞。
  • フレデリック・ホーク(11月6日、84歳)
    アメリカの宇宙飛行士。スペースシャトルに3回搭乗。
  • アヴィシャイ・デケル(11月17日、74歳)
    イスラエルの天体物理学者。大規模構造や銀河形成、宇宙論の理論研究に従事。イスラエル物理学会会長などを歴任。
  • 上杉邦憲(12月12日、82歳)
    宇宙工学者。JAXA名誉教授。文部省宇宙科学研究所(現JAXA宇宙科学研究所)でハレー彗星探査機「さきがけ」、月衛星「ひてん」、小惑星探査機「はやぶさ」などのプロジェクトを主導。
  • 久保田弘敏(12月21日、84歳)
    航空宇宙工学者。東京大学名誉教授。ロケット、スペースプレーンの空気力学などの研究に従事。

改めてその業績を偲び、哀悼の意を表します。


2026年は皆既月食と流星群が好条件

2026年は恒星食の当たり年だ。2025年に続き、プレアデス星団食が2025年12月31日から翌元日にかけてと11月24日の2回見られる。また、しし座の1等星レグルスの食が1月7日と3月2日、5月23日の3回起こり、1月7日、3月2日の現象が好条件だ。

地球上で日食は2回(金環と皆既)、月食が2回(皆既と部分)起こるが、日本から見られるのは3月3日の皆既月食のみだ。夕方から深夜にかけて起こるため見やすい。2月17日の金環日食は南極、8月13日の皆既日食はアイスランドからスペインにかけて見られる。夏休みの海外旅行のついでに観察するのもおすすめだ。

流星群は、三大流星群のうち2つ、8月13日のペルセウス座流星群と12月14日のふたご座流星群が、ともに極大夜に月明かりがなく好条件となる。

突発現象で期待が大きいのが、2024年に爆発すると予測されながら、いまだに爆発していない、再帰新星のかんむり座T星だ。過去に1787年・1866年・1946年と約80年周期で増光が観測されている。爆発すれば2~3等級まで増光すると予想されている。2026年に増光が起こるか、引き続き注意しよう。

宇宙開発・探査の分野では、アメリカの有人月着陸ミッション「アルテミス計画」のうち、有人で月往復を行う「アルテミスII」がいよいよ打ち上げられる予定だ。これまで日程の見直しが繰り返されたが、現時点では2026年2月に打ち上げが予定されている。

NASAの商用月輸送サービス(CLPS)を受注している民間企業の月着陸ミッションは2026年にも行われる。ブルーオリジンの「パスファインダー ミッション1」、インテュイティブ・マシーンズの「IM-3」、ブルーゴーストの「ミッション2」、アストロボティック・テクノロジーの「グリフィン ミッション1」がそれぞれ2026年中に打ち上げ予定だ。

2026年にはアメリカの民間企業、ヴァスト社が史上初の民間宇宙ステーション「ヴァスト1」を打ち上げる予定となっている。

スペースXの宇宙船「スターシップ」の飛行試験は、2026年に9回計画されている。3代目となる「ブロック3」宇宙船が導入され、「アルテミス3」向けの月着陸船仕様機である「スターシップHLS」の試験も始まる。スターシップの地球周回と発射塔への帰還・回収、軌道上での燃料補給、月面での着陸試験などが予定されている。

中国は月探査機「嫦娥7号」の打ち上げと、口径2mの宇宙望遠鏡「巡天」の打ち上げを予定している。巡天は宇宙ステーション「天宮」とほぼ同じ軌道を周回し、定期的に天宮とランデブー・ドッキング可能となる計画だ。また、「天問2号」による小惑星カモオアレワへの着陸と試料採取も予定されている。

日本は小惑星探査機「はやぶさ2」が7月5日に小惑星「トリフネ」への接近観測を行う予定だ。また11月には水星探査機「ベピコロンボ」が水星周回軌道に入る。

欧州は小惑星探査機「ヘラ」が2026年末に小惑星ディディモスに到着する予定となっている。

日本のスペースワン社は「カイロス」ロケット3号機を2月25日に打ち上げ予定だ。

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アストロアーツの2025年

来る新年が美しい星空や天文現象、興味深い天文学や宇宙の話題にあふれる一年となり、それらを安心平和に楽しめることを祈念します。