近傍銀河の紫外線サーベイから作られた星団と恒星の初カタログ
米・マサチューセッツ大学アマースト校のDaniela Calzettiさんたちの研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)を使って近傍銀河を紫外線でサーベイ観測するプロジェクト「レガシー・エクストラギャラクティック・紫外線サーベイ」(Legacy ExtraGalactic UV Survey; LEGUS)を実施し、銀河内に存在する若い星団や高温で大質量の星々のカタログを作成した。
Calzettiさんたちは、1100万~5800万光年の距離に位置する500個の銀河から、銀河の質量や星形成率などをもとにして50個の矮小銀河と渦巻銀河を選び出した。これらの銀河を、HSTを用いて1年以上かけて可視光線と紫外線で観測し、画像を撮影した。さらにそのうち30個の銀河について、星団と星々のデータをまとめた。
星団のカタログには、年齢が100万歳から5億歳の若い星団約8000個が含まれている。これらの星団は、天の川銀河内で最も大きい星団に比べて最大で10倍ほど質量が大きいものだ。
また、恒星カタログには、太陽よりも5倍以上重い3900万個の星々が登録された。可視光線の画像に写っている星々の年齢は100万歳から数十億歳だが、そのうち最も若い1億歳未満のものは、紫外線画像で目立って明るく見える。
2つのカタログに含まれるデータは、大質量の若い星や星団に関する詳細な情報や、周囲の環境が星や星団の進化にどのように影響を与えるかに関する情報を提供してくれるもので、複雑な星形成や銀河の進化を理解するための情報源として活用される。「これまで、紫外線観測のデータを含む星団や星のカタログはありませんでした。紫外線は、最も若く高温の星々の良い目印になります。これらは、星の年齢を知り恒星の進化の完全な歴史を得るために必要なものです。2つのカタログの組み合わせによって、前例のないレベルで星形成を理解できるかもしれません」(Calzettiさん)。
「私たちはカタログ中の星団や星のデータの解釈を手助けするためのコンピューターモデルも提供しています。星形成が銀河内でどのように起こったのかを調べたり、銀河の特性と星形成とを関連付けたりできるでしょう。紫外線画像は、データ内に見つかった超新星の前駆天体の同定にも役立つかもしれません」(米・宇宙望遠鏡科学研究所 Elena Sabbiさん)。
また、LEGUSサーベイのデータは、銀河の星形成と銀河の構造との関係について解明する助けとなるかもしれない。「渦巻銀河を観測すると、星の分布は通常ランダムではなく、渦状腕や環状のようにとても秩序だっています。最も若い星々の分布は、とくにそれに当てはまります。私たちは銀河を詳しく細かく見ることで、銀河内の星の秩序を支配している物理的なメカニズムを明らかにしようとしています」(Calzettiさん)。
〈参照〉
- NASA:Astronomers Release Most Complete Ultraviolet-Light Survey of Nearby Galaxies
- ヨーロッパ宇宙機関:Hubble shows the local Universe in ultraviolet
〈関連リンク〉
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