恒星フレアで吹きとばされる惑星の大気
【2012年7月6日 NASA】
ハッブル宇宙望遠鏡と天文衛星「スウィフト」を使った観測から、系外惑星HD 189733bの大気が主星の強力なフレアで吹きとばされていることがわかった。
63光年かなたの恒星のHD 198733はこぎつね座のあれい星雲(M27)のそばにある8等星で、双眼鏡でも確認することができる。その星の周りを回る「ホットジュピター」(木星型の巨大ガス惑星)HD 187933bは、大気蒸発を調べるのに理想的な天体だ。主星との距離は約500万kmと地球から太陽までの距離の30分の1程度しかなく、たった2.2日で主星の周りを1周してしまう。このため、内部大気の温度は摂氏1000度以上にも達している。
HD 187933bが主星の前を通るとき(つまりトランジットを起こすとき)は、惑星の大気と環境を調べる絶好のチャンスだ。惑星の大気を通ってきた主星の光の中に、惑星大気の情報が痕跡として残るのだ。
「活発な星と巨大惑星の間で、見たことのない相互作用が起こっていることが、ハッブルとスウィフトの多波長観測でわかりました」(パリ天体物理学研究所のAlain Lecavelier des Etangs氏)。
過去の研究では、この惑星の上部大気から水素ガスが噴き出されていることが確認されている。このように大気が蒸発している惑星はHD 209458に続いて2つ目の発見だ(参照:2010/07/22「ハッブル、系外惑星に彗星のようなガスの尾を直接検出」)。また、大気ではなく惑星の地表が蒸発している場合も見つかっている(参照:2012/05/28「彗星のように尾をひく系外惑星候補」)。
2010年4月、研究チームはハッブル宇宙望遠鏡の撮像分光装置STISを使ってHD 189733bのトランジットを観測したが、惑星大気の痕跡は見つからなかった。しかし、2011年9月に行われた追加観測では惑星が驚くほど強力なガスの尾を引いている証拠が確認された。この結果によれば、毎秒1000トン以上のガスが惑星の大気から噴き出されており、ガスの中の水素原子は時速130kmで飛ばされていた。
主星からのX線と強力な紫外線によって惑星の大気が蒸発していると考えていた研究チームは、2011年9月の観測の際、天文衛星スウィフトのX線望遠鏡でも同じ天体を注視していた。そして、トランジットが起こる8時間前に主星で強力なフレアが発生し、X線で3.6倍も明るくなっていたことが分かった。
「この惑星は主星に非常に近いので、地球が受ける最も強い太陽フレアよりも数万倍以上強力なX線の嵐を受けています」(英ウォーリック大学のPeter Wheatley氏)。
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