「リュウグウ」の経度0度が決定、南北の温度差も明らかに
【2018年7月23日 ファン!ファン!JAXA!】
7月19日午前、小惑星探査機「はやぶさ2」に関する記者説明会が開催された。「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」に到着した6月27日以来、約3週間ぶりの説明会となる。
「はやぶさ2」の状況
「はやぶさ2」は現在、高度約20kmのホームポジションに滞在しており、光学航法カメラ「ONC」やレーザー高度計「LIDAR」、近赤外線分光計「NIR3」、中間赤外カメラ「TIR」でリュウグウを観測している。また、探査機の高度を上下させる運用も行っており、19日現在では高度13kmまで下降している(その後、高度6kmまで降下し、23日時点ではホームポジション付近まで戻っている)。
リュウグウの形状、地形
直径約900mのリュウグウは「そろばんの珠」のような形をしている。「はやぶさ2」の接近中からとらえられていた赤道付近の大きなクレーターは直径200mほどあり、南極域には130mほどの大きな白い岩塊も存在している。
探査の基礎となるリュウグウ上の「経度0度」の地点としては、初期段階から目立つ特徴として見えていた2つ並んだ岩の一方が選ばれた。2つのうちの南側の岩が赤道付近にあることなどが選定理由で、岩の中央にある出っ張りを基準としてリュウグウ全体の座標系が決められていくこととなる。なお、リュウグウの自転軸の傾き(赤道傾斜角)は約180度で、金星のように自転の方向と公転の方向がほぼ反対になっている。
これまでに撮影された画像から、リュウグウの3次元形状モデルも作成・公開されている。また、リュウグウの表面には多くの岩塊が存在しているが、運用チームではリュウグウ表面の画像から大きさが約8mを越える岩塊をピックアップしている。今後はこの形状モデルや岩塊の分布情報を元にして、「はやぶさ2」の着陸地点の検討が行われる予定だ。
多くの岩塊の存在から、リュウグウは破壊された天体の「瓦礫」が重力で再び集まって形成されたことが示唆されている。今後の観測から、リュウグウの元となった母天体の正体についての知見も得られることが期待される。
今後の観測で地形の詳細なデータが集まり次第、リュウグウの地名が決められていく予定となっている。「はやぶさ2」運用チームは国際天文学連合の小惑星地形命名ワーキンググループと地名のテーマに関する議論を始めており、テーマ決定後に具体的な名称が提案される見込みだ。
中間赤外線カメラによる初期成果
中間赤外線カメラ「TIR」は常温から約100℃までの温度で最も強く放射される波長10μm付近の赤外線で撮像を行い、リュウグウ表面の熱放射分布を得ることができるカメラだ。
TIRによる観測から、リュウグウでは北半球よりも南半球の方が高温であることがわかった。前述のとおりリュウグウの自転軸の傾きはほぼ180度で垂直だが、実際にはわずかな傾きがあるため両半球で季節が異なり、その違いが温度差として表れていると考えられている。また、自転に伴う温度サイクルもとらえられている。
「はやぶさ2」の今後の運用
まず8月1~2日には、1日未満の短時間で高度5kmまで降りて高度20kmのホームポジションに戻る「中高度降下運用」が予定されている。この運用は、「はやぶさ2」がリュウグウの表面画像から特徴点を割り出し、これを基準にして探査機の位置・速度を求めて降下を行うというもので、いわば着陸の予行演習に当たる飛行だ。
次いで8月6日~7日には、高度約1kmまで降下する「重力計測降下運用」も予定されている。この運用では探査機の位置・速度からリュウグウの重力の大きさが測定され、リュウグウの質量が求められる。さらに8月下旬には、ホームポジションから高度を変えず横方向に20kmほど移動する運用も行われる。
こうした観測やテストを経て8月下旬に着陸地点が決定され、9~10月ごろに1回目のタッチダウンを実施する予定だ。
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