減光を続けるクエーサー3C 273
【2024年2月19日 高橋進さん】
VSOLJ(日本変光星観測者連盟)の観測データによると、おとめ座のクエーサー3C 273がここ数年のうちで暗くなっているようです。
3C 273は24億光年彼方にあり、全天一明るいクエーサーとして有名な天体です。光度は12.8等くらいと言われることが多いですが、昔から明るさを変える変光天体として知られていました。
VSOLJのデータによると、2020年くらいまではおよそ12等台後半の等級を推移していたのですが、2020年以降は13等以下に光度を落としており、この傾向はさらに続いているようです。
これまでの12等台後半くらいまでなら口径10cmクラスの天体望遠鏡でもかろうじて見ることができたのですが、このまま減光が続くと20cmクラスの望遠鏡でなければ見えない天体になるかもしれません。減光がどのようなメカニズムで起こっているのかはよくわかりませんが、今後の変化に目が離せないところです。
〈関連リンク〉
- 日本変光星研究会
- VSOLJ Variable Star Bulletin
- アメリカ変光星観測者協会
- アストロアーツ 天体写真ギャラリー:3C 273
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