20年で20分の1に暗くなった、100億光年彼方の銀河

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100億光年彼方の銀河の明るさが、20年で20分の1に減少した現象が見つかった。銀河中心のブラックホールへ流れ込むガスの量が急激に減少したことが原因とみられる。

【2026年4月3日 すばる望遠鏡

多くの銀河の中心には、太陽の数百万倍から数億倍もの質量をもつ超大質量ブラックホールが存在する。このブラックホールの重力によって引き寄せられた周囲のガスは、ブラックホールの周囲に「降着円盤」と呼ばれる構造を形成する。

降着円盤内でガスが摩擦によって加熱されると膨大なエネルギーが放射され、銀河の中心部が非常に明るく輝くようになる。こうした領域は「活動銀河核(AGN)」と呼ばれる。一方、何らかの理由で円盤内のガスの流れが弱まると放射も弱まり、銀河の中心部は暗くなる。

千葉工業大学の諸隈智貴さんたちの研究チームは、くじら座の領域にある約100億光年(赤方偏移z=1.8)彼方の銀河「SDSS J021801.90-003657.7」について、2002年ごろに撮影されたスローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)の画像と、2018年ごろにすばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)」で得られた画像とを比較した。

その結果、この銀河の見かけの明るさが約20年間で20分の1まで減少していたことが発見された。通常、活動銀河核の明るさの変動は3割程度で、これほど大きな減光は極めて稀だ。

SDSS J021801.90-003657.7
SDSS J021801.90-003657.7。(左)2002年ごろ、SDSS、(右)2018年ごろ、すばる望遠鏡。すばる望遠鏡の画像ではSDSSの画像には見られない暗い天体が周囲に多数検出されていて、それらとの比較から、この銀河が大きく減光したことがわかる(提供:SDSS、HSC-SSP/国立天文台)

諸隈さんたちはすばる望遠鏡や電波望遠鏡などで追加観測を実施し、X線観測のアーカイブデータ、約70年前に撮影された天体写真乾板なども含めて、様々な波長と時代にわたるデータを総合的に解析した。可視光線や赤外線の明るさの変化と、銀河と活動銀河核の理論モデルとの比較から、降着円盤から超大質量ブラックホールへ流れ込むガスの量が、わずか7年で約50分の1に低下したと推定している。

この変化の要因は、ブラックホールを取り巻く円盤そのものの状態が急激に変化し、ブラックホールへの物質供給が急激に止まりつつあるという可能性が考えられる。ただし、このような急激な変化を短時間で引き起こすメカニズムはまだよくわかっておらず、今後の観測と理論研究による解明が待たれる。

活動銀河核の想像図
活動銀河核の想像図。(上)銀河全体、(下)銀河中心部の拡大図。明るい時期(左)には超大質量ブラックホール(中心部の黒い領域)を取り巻く降着円盤(青白い部分)や、その周囲に広がるトーラス(ガスや塵のドーナツ状構造)が明るく輝いている。(右)ブラックホールへのガス流入が少なくなると中心部が暗くなる(提供:千葉工業大学)

「これほど短期間に明るさが大きく変化する活動銀河核が存在し、その減光の原因が超大質量ブラックホールへの質量降着の大きな変化であることがわかったのは非常に興味深いことです。今後、すばる望遠鏡のHSCのような広視野観測装置のデータを用いて、同様の天体をさらに見つけ、超大質量ブラックホールの活動がどのように止まったり再開したりするのかを明らかにしていきたいと考えています」(諸隈さん)。

「従来の標準的な理論では説明できない速い変化を示している天体であり、新しいモデルを構築する際の試金石になります。どういう状況設定であれば、この天体の観測データを理論的に説明できるのか、調べていきます」(富山大学 川口俊宏さん)。

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