宇宙の電磁波の通り道「ダクト」がつくる脈動オーロラは朝に多い

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地上と宇宙の観測事例を用いた統計的調査から、「ダクト」と呼ばれる電子密度の管が脈動オーロラのパッチ状構造を支配するという物理モデルが80%超の高い割合で実証され、ダクト由来の脈動オーロラの発生頻度が朝にかけて多いことが示された。

【2026年9月2日 総合研究大学院大学

極域の夜を彩るオーロラは、磁気圏と呼ばれる地球近傍の宇宙空間から地球大気中に降り込んできた電子(降下電子)が酸素や窒素などの大気粒子と衝突することで発生する発光現象である。

とくに、数秒から数十秒で点滅するオーロラは「脈動オーロラ」と呼ばれ、磁気圏を伝搬する「コーラス波」によって高エネルギー電子が散乱・降下することで発生している。コーラス波は磁気圏の赤道面付近で発生すると考えられており、磁場に沿って地球方向へ長い距離を伝搬するほど散乱される電子のエネルギーは高まる。しかし、一般的な伝搬では、コーラス波は磁場に沿って伝搬せずに減衰してしまう。

脈動オーロラの写真
脈動オーロラ(米・アラスカ州のポーカーフラット・リサーチレンジ観測サイト内にあるサイエンス・オペレーション・センターで撮影)(提供:JAXA宇宙科学研究所

総合研究大学院大学先端学術院/国立極地研究所の伊藤ゆりさんを中心とする研究チームは、地上の施設とジオスペース探査衛星「あらせ」(ERG)による同時観測のデータを用いた過去の研究で、コーラス波の「長距離」伝搬と脈動オーロラの「パッチ状」構造を、宇宙空間における電子密度の管状構造「ダクト」が支配するという物理モデルを提唱した

今回、伊藤さんたちは次のステップとして、このモデルが統計的にどの程度の普遍性をもって成り立つのか、どの時間帯で多く発生するのかを定量的に評価するため、コーラス波の長距離伝搬とパッチ状脈動オーロラの発生を統計的に調査した。

「あらせ」によるるコーラス波観測のイメージイラスト
「あらせ」によるコーラス波観測のイメージイラスト(提供:JAXA

研究チームは観測データから、晴天でオーロラの有無や形状が確認でき、「あらせ」がコーラス波の発生源である磁気赤道面から遠く離れた場所に位置していたという、2つの条件を満たす同時観測事例を60イベント抽出した。

これを解析したところ、ディフューズオーロラ(発光が弱く形状がぼんやりとしたオーロラで明滅のないもの)または脈動オーロラが観測され、かつ、長距離伝搬するコーラス波が観測された事例(ケース1)は、真夜中から朝方にかけて発生頻度が増加することがわかった。一方、ディフューズオーロラまたは脈動オーロラは観測されたが、長距離伝搬するコーラス波が観測されなかった事例(ケース2)は、真夜中付近で発生頻度がピークとなり、朝方にかけては減少する傾向が明らかとなった。

イベント数
(a)ケース1(赤)とケース2(青)のイベント数。(b)全イベント数に対するケース1(赤)とケース2(青)のイベント数の割合。ケース2の発生割合が真夜中付近でピークを持つのに対し、ケース1は真夜中から朝側にかけて上昇していくことがわかる。画像クリックで表示拡大(提供:総合研究大学院大学、以下同)

さらに、ケース1とケース2についてオーロラの形状(パッチ状/非パッチ状)を調査したところ、ケース1では93%のオーロラがパッチ状脈動オーロラであることが判明した(ケース2では86%がディフューズオーロラまたは非パッチ状脈動オーロラだった)。このことから、先行研究で提唱したモデルが80%を超える高い割合で成立することが示された。

モデルの概要
先行研究および今回研究で示したモデルの概要。真夜中前(夕方側)ではコーラス波の発生そのものが少ない。真夜中付近になるとコーラス波が発生し、脈動オーロラも出現する。真夜中以降(朝側)では、ダクトによるコーラス波の長距離伝搬と超高エネルギー電子散乱、およびパッチ状脈動オーロラの発生が多くなる

本研究はダクトがパッチ状脈動オーロラに深く関係していることを示すものだ。しかし、ダクトがいつ(時間)、どこで(電離圏または磁気圏)、どのように(プラズマ物理)形成されるのかは明らかになっていない。今後計画されている衛星と地上からの観測によってダクトの形成に関する理解が深まり、宇宙天気予報の精度向上などにつながる成果が得られると期待される。

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