アトラス彗星の特異な金属組成をコマの広範囲で確認

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恒星間天体アトラス彗星の分光観測から、鉄・ニッケル原子が多いという特異な性質がコマの広範囲で確認された。また、コマ中のガスの膨張速度が、同じ太陽距離にある太陽系の彗星の半分程度とみられることも示された。

【2026年9月28日 京都産業大学】

恒星間天体のアトラス彗星(3I/ATLAS)では、鉄やニッケルの強い輝線が検出されることが、これまでの観測研究で示されている(参照:「恒星間天体アトラス彗星から極端に多い鉄やニッケルを検出」)。これらの金属は太陽系の彗星からも検出されているが、その輝線は通常非常に弱いものであり、アトラス彗星の特異性が示唆されていた。

米・テキサス大学オースティン校マクドナルド天文台のAnita Cochranさん、京都産業大学神山宇宙科学研究所の河北秀世さんを中心とする研究チームは、アトラス彗星が太陽系から去りつつあった2025年12月に、マクドナルド天文台の口径10mホビー・エバリー望遠鏡に搭載された分光装置「VIRUS(Visible Integral-Field Replicable Unit Spectrograph)」を用いてアトラス彗星を観測した。

VIRUSは「面分光」と呼ばれる方法で、空のある範囲について、位置ごとのスペクトルを同時に取得できる。今回の研究では、彗星の核から太陽方向に約8万5000kmにわたる広い範囲の観測が行われ、ガスの種類やその空間分布が調べられた。

その結果、太陽系の彗星でも一般的に見られるCN分子やC3分子などに加えて、非常に強い中性鉄原子(Fe I)と中性ニッケル原子(Ni I)の輝線が検出された。鉄・ニッケルが多いというアトラス彗星の性質が、従来よりもコマ(核を取り巻くガスや塵の領域)の広範囲で確認されたことになる。

アトラス彗星のCN分子の空間分布
アトラス彗星のCN分子の空間分布。×印は彗星核の位置を示す(提供:Cochran et al.、以下同)

太陽系の彗星の鉄やニッケルは高い波長分解能を持つ分光器を使わなければ検出が困難だが、アトラス彗星では、波長分解能が比較的低いVIRUSでも明瞭に確認できるほど強い輝線が現れている。とくに、一部の中性ニッケル原子の輝線はCN分子よりも強く見えるほどで、きわめて特徴的な結果となっている。

アトラス彗星の核付近で得られたスペクトル
アトラス彗星の核付近で得られたスペクトル。(青)ダストによる反射太陽光を含む観測スペクトル、(黒)反射太陽光を取り除いたガス成分のスペクトル、(緑)中性鉄原子の輝線の位置、(赤)中性ニッケル原子の輝線の位置

また、ガスの空間分布をモデルで解析したところ、コマ中のガスの膨張速度は、同じ太陽距離にある太陽系の彗星と比べて半分程度と考えられることが示された。これは電波望遠鏡を用いた別の観測とも整合する結果である。

彗星のように空間的に広がった天体では、核付近の狭い範囲の観測だけでは、全体の性質を十分に理解できない可能性がある。今回の研究はまさに、広がったガスの空間分布の全体像を調べることが重要であることを示すものだ。

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