予想よりも激しく活動していた初期銀河

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X線天文衛星「すざく」の観測から、複数の銀河団の外縁部における鉄の存在比が同じであることがわかった。銀河団の形成以前に、予想以上に激しい初期銀河の活動で作られた鉄がその起源のようだ。

【2017年7月5日 広島大学EWASS Press

宇宙に存在する元素のうち、ビッグバンで生成されたのは水素、ヘリウムとわずかなリチウムだけで、それよりも重い炭素や酸素、鉄などの元素は、宇宙の進化とともに形成された銀河中の星の中で、核融合によって生成されたと考えられている。

こうした重い元素は超新星爆発などによって星の周囲へとばらまかれていくが、さらに広い領域や宇宙全体への広がりについては、はっきりとはわかっていない。

広島大学大学院理学研究科のNorbert Wernerさんたちの研究チームは、日本のX線天文衛星「すざく」による10個の近傍銀河団の観測データを解析し、これらすべての銀河団の外縁部において、銀河団を満たす高温プラズマ中の鉄の含有量(存在比)が太陽の値の3分の1で揃っていることを明らかにした。

この結果は、約100億年前に銀河団が形成されたよりさらに前に宇宙の中で鉄が作られて、銀河間空間にばらまかれたことを示唆している。こうした鉄などを生成したのは初期銀河の中の星であり、これらが早い段階で非常に多数の超新星爆発を起こすことによって重元素が銀河の外に撒き散らされたと考えられる。

「もし、観測された銀河団中の重元素が天文学的に比較的最近作られたものだとすると、鉄の存在量は銀河団によって異なるはずです。鉄の分布が均一であるという事実は、鉄の起源が宇宙の歴史の中でかなり早い段階に誕生した星や銀河であることを示しています」(米・スタンフォード大学 Ondrej Urbanさん)。

「鉄の分布の著しい一致は、多くの超新星爆発や、超大質量ブラックホールからの風とジェットのエネルギーによって、宇宙全体でまんべんなく元素が混ざり合ったことを示唆しています」(Wernerさん)。

M82
おおぐま座の不規則銀河「M82」。X線、可視光線、赤外線の観測データを合成した擬似カラー画像。多数の超新星爆発が作り出した銀河風と呼ばれる激しい流出(中心から左上と右下)が観測されており、宇宙初期にはさらに激しい銀河が多数存在していたと考えられる(提供:NASA/JPL-Caltech/STScI/CXC/UofA/ESA/AURA/JHUA)