【レポート】小惑星探査機「はやぶさ2」の小惑星リュウグウ到着に関する会見
【2018年6月28日 ファン!ファン!JAXA!】
6月27日午後、宇宙航空研究開発機構(JAXA)相模原キャンパス(神奈川県相模原市)において、小惑星探査機「はやぶさ2」の小惑星到着に関する記者会見が行われた。
はじめに
まず、プロジェクトマネージャーの津田雄一さん(JAXA宇宙科学研究所)から、「はやぶさ2」が1302日間にわたる32億kmの安定した飛行をこなした後に、6月27日午前9時35分に小惑星「リュウグウ」の上空約20kmのホームポジションへ無事到着し、人類未踏の探査の入り口に立てたこと、また到着後の探査機の状態も正常で、観測に適したホバリング位置に探査機を維持させることに成功していることが発表された。
続いて、プロジェクトエンジニアで衝突装置(インパクター)担当の佐伯孝尚さん(JAXA宇宙科学研究所)は、「運用チームとしては一安心といったところだが、探査機がリュウグウに支配されている領域に入ったため、これまで以上に手をかけた運用を行いながら、探査機が表面の物質を採取するために行う「タッチダウン」や衝突装置による人工的なクレーターの形成といった重要な試みの準備を一歩一歩進める段階がやってきた」と語った。
光学航法カメラ・科学観測担当の杉田精司さん(東京大学)は、リュウグウへの接近に伴って得られた画像から、この小惑星が興味深い探査の対象であることが明らかになっていると述べた。
リュウグウの姿について
続いて、津田さん、プロジェクトサイエンティストの渡邊誠一郎さん(名古屋大学)、杉田さんから、リュウグウの姿に関する説明があった。
説明の冒頭、同じ色調の地球の画像とリュウグウのカラー画像が公開され、リュウグウが炭素を多く含むC型の小惑星独特の暗い色をしていることが紹介された。リュウグウの反射率は小惑星由来の隕石である「炭素質コンドライト」の反射率と同等かやや暗めであることが示されており、炭素が豊富であることがすでに判明している。
「はやぶさ2」と同様に小惑星のサンプルを持ち帰るNASAの探査機「オシリス・レックス」が目指している小惑星「ベンヌ(ベヌー)」とリュウグウは、(広い意味で炭素が豊富なC型小惑星であることを示す)スペクトルや形がそっくりの天体であることが明らかになっている。2つの小惑星間には比較する点も多く、どこに差があるのかを調べることは、科学的意義が非常に大きいことにも触れられた。
形状
リュウグウの形については、小惑星としては決して珍しくはないが、そろばんの珠のような形は通常自転の速い小惑星に見られるもので、自転が7.6時間とゆっくりした周期のリュウグウが、このような形であることは予想されていなかったという。
また、リュウグウがどのような進化をしてきたのかに関わる事実の一つとして、自転しているリュウグウがいつ見てもダイヤモンドのような形で変化がないということから、上から見るとまん丸な形であることが示されている点が挙げられた。
表面の特徴
現在までにはっきりとわかっている表面の特徴は、到着前の画像からすでに明らかになっていた直径200m程度の大きなクレーターのほか、ゴツゴツとした岩塊のようなものが多数見られることだ。それらがあちこちに散らばっているため、今後組成の違いが見られるかもしれない。岩塊の起源は、太陽系の年齢に近い母天体である可能性が高く、リュウグウの探査から太陽系の起源に迫ることが期待されている。
重力が小さいリュウグウのような天体では、表面の岩塊は衝突で飛び出してしまうため、なぜ岩塊が多いのか、なぜ直径900mの天体上に最大で幅100mほどの大きさの岩があるのかは謎である。リュウグウの形成プロセスを知る鍵となりそうだ。
今後のスケジュール
地球から遠く離れた天体に20kmまで接近しているということは、1000万倍拡大してものを見ることに匹敵しており、人類が初めて遭遇した天体での発見に期待がかかる。
しかし、探査とサンプル採取の時間は1年半と限られているため、スケジュールを的確にこなしていく必要がある。
まず、約1か月半かけて探査機の高度をさらに下げ、重力を計測するなどして、着陸にとって大事な「傾斜度」(重力に対して各地点の傾きがどれくらいであるか)が調べられる。
加えて、探査機に搭載されている中間赤外カメラ「TIR」による表面温度の測定や、近赤外線分光計「NIRS3」を使った表面の物質の分布調査、レーザ高度計「LIDAR」による探査機と小惑星間の距離の測定データをもとに、どこにどんな物質が存在しているのかを含めた地形的な特徴を示す3Dの模型が作られる。
この模型をもとに、9月から10月に予定しているインパクターの衝突やサンプルを採取するタッチダウンをどの地点で行うのかが検討され、8月下旬に最終判断が下される。
岩が多く見られるリュウグウのどこに着陸するのかの判断は難しく、繰り返し行われてきた着陸シミュレーションよりも、実際の難易度も高いとみられている。探査機の安全は絶対だが、サンプル採取を目指す着陸は、成功確率が100%でなくても、科学的重要性の面からも判断した上で、確率が高い地点が選ばれる。津田さんは「リュウグウへ無傷で到着できたことは快挙だが、今後も果敢に挑戦して、創造性を持って大胆に探査に望み、「はやぶさ」を越える成果を挙げたい」と意気込みを語っている。
祝福メッセージ
協力関係にあるNASAや、「はやぶさ2」の小型着陸機「MASCOT」を開発したドイツ航空宇宙センターとフランス国立宇宙研究センターからは、通常のメールによるシンプルな祝福メッセージではなく、詳細な情報が盛り込まれるなどした異例のビデオメッセージが寄せられ、記者会見で紹介された。
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