リュウグウの形状モデル初期バージョンが完成
【2018年7月12日 JAXA はやぶさ2プロジェクト】
探査機「はやぶさ2」が撮影した画像から作成された、小惑星「リュウグウ」の初となる三次元形状モデルが公開された。同じデータをもとに、2つの異なる手法で作成されたものである。
会津大学によるモデルは、カメラが多視点から取得した画像から形状を復元する「Structure-from-Motion(SfM)」と呼ばれるステレオ視の手法の一種から作成されている。これは最近よく見かける、ドローンからの空撮の映像から地形や建物の形を作成するのにも用いられている方法である。
一方、神戸大学によるモデルは「Stereophotoclinometry(SPC)」と呼ばれる手法で作られたものである。画像に写った対象物の光の当たり具合を利用して、複数の画像から立体的な形状を推定するもので、探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」の形状を調べる際にも利用された方法である。
作成された2つの形状モデルデータを比較すると、リュウグウの形状をどの程度の精度で計測できているかを把握することができる。両者には細かい差異が見られるが、どちらもそろばんの珠のようなリュウグウの全体形状や、その表面にあるクレーターのような窪地、岩塊が再現されている。
リュウグウの形状は、この小惑星の成り立ちを考える上で基本的な情報の一つであり、今後の探査機の運用のためにも重要なものである。今後の観測で得られる解像度の高い画像からは、より詳細なリュウグウの三次元形状が明らかにされていくだろう。
このほか、リュウグウから20km離れたホームポジションから撮影された画像や、リュウグウの全体像を立体視できる動画なども公開されている。
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