地球質量の5%は太陽系外縁で生まれたリュウグウ的物質

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小惑星リュウグウの銅と亜鉛の同位体組成が、元素構成が特徴的なイブナ型炭素質隕石と一致することがわかった。両者は太陽系外縁部で生まれ、同様の物質は地球の形成にも寄与したと予想される。

【2022年12月19日 東京工業大学

探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウの試料は、様々な研究チームが異なる方法で分析を進めている(参照:「リュウグウ試料からアミノ酸などを検出」)。このうち北海道大学の圦本尚義さんを中心とする化学分析チームは、試料の化学組成や同位体組成を調べ続けてきた。その中で、リュウグウの特徴がイブナ型炭素質隕石と呼ばれる珍しい隕石のグループと一致することがわかっている。

イブナ型炭素質隕石は、貴ガス、炭素、窒素、リチウムなど一部の元素を除けば太陽の光球(表面)と同じ化学組成を示す。比較的沸点が低い揮発性元素を豊富に含むことなどから、イブナ型炭素質隕石もリュウグウも天王星以遠の太陽系外縁部で生まれたのだという説も提唱された。

ただし、リュウグウとイブナ型炭素質隕石との類似性が全ての元素で確認されたわけではない。凝縮温度が摂氏862度を超える難揮発性元素(チタン、クロム、鉄など)、および摂氏392度以下の揮発性元素(酸素・炭素・窒素など)の同位体組成は測定されているものの、中程度の揮発性を持つ元素群については調べられていなかった。

そこで圦本さんたちは、凝縮温度が摂氏453度の亜鉛と摂氏764度の銅に着目し、リュウグウ、イブナ型炭素質隕石、およびその他の隕石の同位体組成を精密に測定した。その結果、この2つの元素についても、リュウグウとイブナ型炭素質隕石の同位体組成は分析誤差の範囲内で一致している一方、他の炭素質隕石とは明らかに異なっていることが明らかになった。

亜鉛と銅の同位体組成グラフ
リュウグウ試料(Ryugu)、イブナ型炭素質隕石(紫の範囲内)、およびその他の炭素質隕石の、亜鉛(Zn)と銅(Cu)の同位体組成。Alais、Orgueil、Tarda、Murchison、Allendeはそれぞれ隕石名(提供:Paquet et al., 2022を一部改変、以下同)

これにより、リュウグウとイブナ型炭素質隕石の母天体が、太陽系外縁部で生まれた親戚であることが改めて裏付けられた。

さらに分析チームは亜鉛の5つの同位体に注目して、リュウグウと地球を比べた。亜鉛の同位体はそれぞれが超新星や赤色巨星など異なる形で合成されるため、供給割合のわずかな形で同位体組成に違いが表れる。とくに同位体の一つ66Znは太陽系の内側に由来する物質では欠乏している一方、リュウグウには比較的多く含まれていることがわかっている。

比較研究の結果、地球の亜鉛同位体組成は、太陽系形成時に地球の軌道付近に存在していた物質だけでは説明できず、リュウグウのような組成の物質が約30%必要であることがわかった。リュウグウ的物質には亜鉛自体が比較的多く含まれていることを考慮すると、地球の質量の約5%が、リュウグウのような太陽系外縁部で形成された物質に由来するという。

様々な試料における亜鉛の相対的な量
太陽系内側物質に由来する隕石(Ureilites - Enstatite)、炭素質隕石(Carbonaceous iron, Carbonaceous)、リュウグウ試料(Ryugu)、および地球物質(Earth)で66Znの相対的な量を比較した図。地球を基準にすると太陽系内側では66Znが少なく、リュウグウなどでは比較的多いことがわかる

リュウグウとイブナ型炭素質隕石がほぼ同一の化学組成・同位体組成であることは、リュウグウも太陽系の起源研究に寄与する重要な天体であることを意味している。今後の研究で、地球の形成に寄与した約5%のリュウグウ的物質がどのようにして地球形成領域にやってきたのか、また、亜鉛以外の元素がどれくらい取り込まれたのかも解明されるだろう。

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