小惑星リュウグウは彗星と同郷か

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小惑星リュウグウの試料から見つかった始原的な鉱物を分析した結果、ビルト彗星(81P)と似た傾向を示した。リュウグウの母天体が生まれた場所は太陽から遠く、彗星の故郷に近いかもしれない。

【2022年12月26日 北海道大学

探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウの試料に含まれる、鉄や銅など様々な元素の同位体組成は、イブナ型炭素質隕石と呼ばれる珍しい隕石に類似している。その組成は太陽系の内側で形成された物質とは異なることから、リュウグウもイブナ型炭素質隕石も太陽系外縁に起源があると予想されている(参照:「地球質量の5%は太陽系外縁で生まれたリュウグウ的物質」)。だが、結論を下すための決定的な証拠、つまり実際に太陽系外縁から来た天体との比較が足りなかった。

北海道大学の川﨑教行さんたちの研究チームは、NASAの彗星探査機「スターダスト」がビルト彗星(81P)から採取したサンプルの分析結果を、リュウグウや様々な炭素質隕石と比較した。

研究チームが着目したのは、太陽系誕生直後に原始惑星系円盤の高温ガスが冷えて形成された始原的な鉱物だ。川﨑さんたちは走査電子顕微鏡で試料を観察して高温ガス由来の鉱物を探し、かんらん石、輝石、スピネルなど数十μm以下の非常に小さな粒子を数十粒見つけた。

リュウグウの試料から発見された高温鉱物の例
リュウグウの試料に含まれていた、高温ガスに由来する鉱物(カンラン石、黄色く表示)。X線を照射して元素を分析しており、赤がマグネシウム、緑がケイ素、青が鉄の存在を示す(提供:Kawasaki et al. 2022、以下同)

リュウグウの試料に含まれるかんらん石とスピネル
リュウグウ試料の電子顕微鏡写真。(左)かんらん石、(右)スピネル

見つけた粒子に含まれる酸素の同位体組成を同位体顕微鏡(二次イオン質量分析計)で測定した結果、2種類に分類できた。研究チームによれば、それぞれ「コンドリュール」および「難揮発性包有物」という鉱物に由来する。どちらも摂氏1000度以上の高温環境だった太陽系の内側で形成され、やがて太陽系の外側へと輸送されたと考えられる鉱物だ。難揮発性包有物の方が固まるのが早く、その分だけ太陽から遠くへ運ばれたとされている。

高温鉱物の酸素同位体組成
リュウグウの試料とイブナ型炭素質隕石に含まれる高温鉱物の酸素同位体組成。右上に集まっているのはコンドリュールを起源とする鉱物で、左下は難揮発性包有物を起源とする鉱物

これら高温で生成された鉱物のうち、難揮発性包有物に由来する粒子は、イブナ型を除く通常の炭素質隕石では約2%しか見つからない。つまりコンドリュール由来の粒子が圧倒的に多い。しかしリュウグウとイブナ型炭素質隕石では、およそ30%が難揮発性包有物由来だった。この割合は、ビルト彗星のサンプルでもほぼ同じである。

以上のことから、リュウグウやイブナ型炭素質隕石の母天体が形成された場所は、通常の炭素質隕石の母天体よりも太陽から遠く、彗星が生まれるような領域に近かったのではないかと考えられる。

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