XRISMで恒星巨大フレアのX線をとらえた

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日本のX線天文衛星「XRISM」で2個のフレア星の精密なX線スペクトルが得られた。フレアのない静穏期とフレア中のそれぞれで、鉄イオンからのX線が初めてとらえられた。

【2026年3月18日 JAXA宇宙科学研究所

太陽や恒星の最外層には「コロナ」という高温のプラズマが存在する。太陽のコロナの温度は約100万度だが、活動的な恒星では数千万度にも達する。

太陽のおおまかな構造
太陽のおおまかな構造。フレアはコロナ内部で磁力線がつなぎかわることでエネルギーが放出され、彩層のガスが爆発的に蒸発する現象だ(提供:NAOJ/JAXA

コロナでは「フレア」と呼ばれる爆発現象が発生し、とくに「フレア星(閃光星)」と呼ばれる恒星では巨大フレアが起こることが知られている。たとえば、「りょうけん座RS(RS CVn)型連星」というタイプのフレア星は非常に公転周期が短い近接連星系で、激しいフレアが発生する。

RS CVn型連星とXRISMの想像図
りょうけん座RS型連星の想像図(ChatGPTにて作成)とXRISM(提供:JAXA)

太陽で強力なフレアが起これば、現代の私たちの生活に不可欠な電力インフラや人工衛星などに深刻な影響を及ぼしかねない。また、系外惑星系の主星で起こる巨大フレアは、惑星に生命が誕生する条件に大きな影響を与える。こうしたことから、フレアの性質を調べることは重要な課題だ。

JAXAのX線分光撮像衛星「XRISM」には、X線のエネルギー(波長)を精密に測定できるX線マイクロカロリメーター分光器「Resolve」が搭載されていて、鉄の原子から電子が1個または2個を除いて全てはぎ取られた鉄イオン(水素状鉄・ヘリウム状鉄)が放つX線(K殻遷移輝線)をきわめて高い分解能で分光できる。これらの鉄イオンは、ちょうど恒星の巨大フレアの温度に当たる約1000万~1億度のプラズマで見られるものであり、フレアの観測研究に適している。

東京大学/JAXA宇宙科学研究所の栗原明稀さんを中心とする研究チームは、2023年9月の「XRISM」打ち上げ後に行われた性能実証期間に、活発なりょうけん座RS型連星であるフレア星「はえ座GT」(距離約460光年)と「おうし座V711(HR 1099)」(距離約95光年)を観測し、X線の詳細なスペクトルを取得した。

観測の結果、はえ座GTではフレアが発生していない静穏期の詳細なX線スペクトルを得ることができ、恒星のコロナで初めて、K殻遷移X線の輝線を検出した。また、おうし座V711の観測では、およそ27時間にわたって続く恒星フレアがとらえられた。X線マイクロカロリメーターで恒星フレアの分光観測に成功したのはこれが初めてだ。

栗原さんたちはこれらの観測で得られたスペクトルを解析し、恒星巨大フレアのプラズマの温度や元素組成、イオンが電子との衝突で電子をさらに失う割合と逆に電子を得る割合の釣り合いなどの情報を、複数の輝線の強さから見積もることに成功した。今回得られた結果は、これまでに太陽の観測から導かれてきたフレアの標準モデルと良く合っているという。

今回の観測では恒星フレアを全期間にわたってとらえることができたが、フレアのスペクトルの時間変化を精密に追うことは、X線の光量不足でできなかった。今後、さらに明るい巨大恒星フレアをXRISMで観測できれば、こうした細かい時間変化のデータをフレアの理論モデルと比較することもできると期待される。

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