分子雲にぶつかって再増光、マイクロクエーサーのX線ジェット

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マイクロクエーサー「SS 433」のX線ジェットが遠いところで再増光を見せる現象について、ジェットが星間分子雲に衝突し、周囲の磁場が強められたことに起因すると考えられることが、野辺山45m電波望遠鏡の観測から明らかになった。

【2026年7月2日 国立天文台 野辺山宇宙電波観測所

わし座の方向約1万8000光年の距離にある「SS 433」は、ブラックホールまたは中性子星と考えられるコンパクト天体と伴星からなる連星系である。その中心天体の近傍からは、根元の速度が秒速7万8000km(光速の約26%)にも達する非常に高速のプラズマ流が強い両極X線ジェットとして噴き出していて、天の川銀河内で最も活発な「マイクロクエーサー」の代表例となっている。

このジェットはSS 433の中心から約75光年も離れた場所で再び明るく輝く様子が観測されている。しかし、そのメカニズムはよくわかっていなかった。

山口大学/国立天文台の酒見はる香さんたちの研究チームは、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡を用いてSS 433のX線ジェットの再増光領域を観測した。すると、再増光領域のX線放射とよく対応する位置に、ガスや塵が高密度に密集した塊「分子雲クランプ」が初めて検出された。分子雲クランプの典型的な大きさは約6.5光年で、一部はX線ジェットの構造に沿うような細長い形を示していた。

SS 433周辺
(A)SS 433周辺の、X線(オレンジ)と一酸化炭素分子が放つ電波(シアン)のデータ。東西に伸びるX線ジェットの再増光領域に分子雲が存在していることがわかる。(B, C)SS 433のX線ジェット再増光領域を拡大した図。分子雲の分布を背景として、X線放射の分布を等高線で表している(提供:国立天文台野辺山宇宙電波観測所リリース)

酒見さんたちが分子雲とX線放射の位置関係を詳しく調べたところ、X線放射のピークは分子雲のピークと完全には一致せず、ジェットの進行方向に対して分子雲のすぐ下流側で明るくなることがわかった。また、分子雲の中心ではなく表面付近で、より高いエネルギーのX線が強くなっていることも判明した。

これらの結果は、SS 433のジェットが周囲の星間分子雲に衝突し、その相互作用によってX線放射が強められているというシナリオで自然に説明できる。ジェットが高密度の分子雲に衝突すると、分子雲の表面や周囲の層で乱流が発生する。この乱流によって磁場が増幅されると、高エネルギーの電子が磁場の中で曲げられながら運動することで生じるシンクロトロンX線放射が強められる。そのため、X線放射は分子雲の最も密度の高い中心ではなく、分子雲表面やその下流側で強くなるというわけだ。

SS 433周辺の想像図
SS 433周辺の想像図。SS 433連星系とジェット(枠内)から遠く離れた両側でジェットが分子雲に衝突し、ジェットがが再増光している(提供:国立天文台)

今回の成果は、コンパクト天体から噴き出すジェットが周囲の星間物質とどのように相互作用し、どのように高エネルギー放射を生み出すのかを理解するうえで重要な手がかりとなる。SS 433のX線ジェットからは非常に高いエネルギーのガンマ線も検出されていて、ジェットと分子雲の相互作用は高エネルギー宇宙線粒子の生成にも関係しているかもしれない。今後、高解像度の観測で分子雲クランプの詳細な形状や物理状態を調べることで、実態がさらに明らかになると期待される。

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