南極隕石からDNA・RNAの材料分子が全て見つかった

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南極で見つかった炭素質隕石から、生命の材料である5種類の核酸塩基が全て検出された。落下から約10万年間、地球の核酸塩基が混入していないことも確認された。

【2026年7月24日 北海道大学

日米の小惑星探査機「はやぶさ2」「オシリス・レックス」が地球に持ち帰った炭素質小惑星リュウグウとベンヌ(ベヌー)の試料からは、地球生命のDNA・RNAを形づくる5種類の核酸塩基(アデニン(A)・グアニン(G)・シトシン(C)・チミン(T)・ウラシル(U))が全て検出されている(参照:「リュウグウ試料からDNA・RNAを構成する全5種の核酸塩基を検出」「ベンヌ試料から核酸塩基と高濃度の尿素を検出」)。この2つの小惑星の試料はクリーンルームで厳重に管理されており、検出された核酸塩基は地球上の分子が混入したのではなく、確かに小惑星試料にあったものだと結論されている。

核酸塩基
DNAとRNAの構成分子である5種類の核酸塩基。DNAはA, G, C, T、RNAはA, G, C, Uが鎖状に結合してできている(提供:北海道大学リリース、以下同)

一方、地球に落下した炭素質隕石(=炭素質小惑星の破片)でも、核酸塩基の存在を調べる研究が1960年代から行われてきたが、5種類の核酸塩基全てが検出された例はきわめて少ない。その理由には、隕石中の微量な核酸塩基を分析する技術が十分でなかったことや、検出された核酸塩基が元々隕石にあったものか、それとも落下後に混入した地球の物質なのかを判別するのが難しかったことなどがある。

北海道大学低温科学研究所の大場康弘さんを中心とする研究チームは、リュウグウやベンヌの試料分析で培った最新技術を使い、南極で発見された炭素質隕石から核酸塩基の検出を試みた。南極は、隕石が地球の有機物に汚染される可能性が最も低いと考えられる場所の一つだ。

分析された南極産炭素質隕石
(左)今回分析された6種類の南極産炭素質隕石。Yamato(Y)・Asuka(A)・Belgica(B)はそれぞれ、隕石が採集された南極の地域(やまと山脈・あすか基地付近・ベルジカ山脈)を表す。(右)南極氷床の試料から採取した比較用の氷試料

大場さんたちは南極の炭素質隕石6種を粉末にして濃塩酸とともに加熱し、その抽出液から微小な成分を分離して、これを高精度の「液体クロマトグラフ-超高分解能質量分析計」で分析して核酸塩基類を探した。

これと並行して、隕石成分を含まない比較用の環境ブランク試料(空試料)として、南極の裸氷域から1989年に採取されて保管されていた氷床コア試料を溶解・濃縮し、同様に核酸塩基の存在を調べた。

分析の結果、6種類の南極産炭素質隕石のうち3種類から、5つの核酸塩基全てを含む、最大43種の窒素複素環化合物(環状骨格に窒素原子を含む有機化合物)が検出された。このタイプの有機分子はベンヌ試料では38種リュウグウ試料では14種検出されている。南極隕石から核酸塩基が全て見つかったのは今回が初めてだ。

一方、南極氷床の氷試料からは核酸塩基類は検出されなかった。このことから、隕石が南極に落下してから発見されるまでの約10万年間、氷との接触で地球起源の核酸塩基が隕石に混入したことはなかったと考えられる。

また、今回南極隕石から検出された5種の核酸塩基のうち、シトシンだけは他の核酸塩基に比べて存在量がずっと少ないこともわかった。その理由として、隕石が落下してから現在までの間に2次的な化学反応でシトシンがウラシルに変化したと大場さんたちは考えている。隕石が地球環境に長期間さらされると、地球物質の混入とは別の過程で組成が変化しうるという知見は、今後、核酸塩基の分析結果を理解する上でも重要な情報だ。

小惑星の試料は量に限りがあるが、南極産隕石はこれまでに数万個も発見され、その中にはリュウグウやベンヌと同様の炭素質隕石も数%含まれている。今後、こうした南極産炭素質隕石を分析することで、宇宙でどんな化学反応が起こり、生命誕生前の地球にどんな有機物がもたらされて生命の誕生にどう関わったのか、といった謎を解く手がかりになるかもしれない。

南極産炭素質隕石のイメージ画像
5種類の核酸塩基を含む南極産炭素質隕石のイメージ画像

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