イトカワの微粒子の初期分析結果を中間報告
【2011年3月14日 JAXA】
1月下旬から初期分析が行われている小惑星イトカワの微粒子について、中間報告が行われた。微粒子がイトカワ由来のものであるという根拠が改めて示されるなど、今後の小惑星・隕石研究を推し進めるためのステップは順調のようだ。
小惑星探査機「はやぶさ」が2010年6月に地球に持ち帰った小惑星イトカワの微粒子の初期分析(注1)結果について、米ヒューストンで開催中の「第42回月惑星科学会議(LPSC)」(3月7日〜11日)での発表に合わせて宇宙航空研究開発機構(JAXA)が記者会見を行った。
今回分析結果が発表されたのは、サンプル収納容器の2つの区画の1つ「A室」から回収され電子顕微鏡観察で岩石質と判断されたもので、50個程度の微粒子の初期分析の結果以下のようなことが明らかになった。
- 0.03〜0.1mmの微粒子の3次元構造ならびに主要元素組成、酸素同位体比を分析したところ、その物質科学的特徴は特定種の石質隕石の特徴と合致する
- 宇宙風化作用(注2)の痕跡ならびに希ガス(注3)の分析結果から、微粒子はイトカワ表面から採取されたものであることが明らかになった(注4)
- ひとつの岩石には複数の鉱物種が存在し、複雑な3次元構造をしている(画像参照)
- 今のところ、有機物の証拠は同定されていない
地上で採集される隕石、「はやぶさ」のイトカワ接近時のリモート観測データ、それに人類が初めて直接手に入れた小惑星表面のサンプルが加わったことにより、小惑星・隕石研究における従来の仮定に強い裏付けがもたらされつつある。大型放射光施設「SPring-8」(注5)などで行われる初期分析、そしてさらに詳細な分析の結果が期待される。
注1:「初期分析」 代表的なサンプル(試料)について、カタログ化(同定・分類・採番)に資する情報を得る為に行う分析。
注2:「宇宙風化作用」 大気がなく宇宙空間にさらされた環境で、太陽風や太陽熱、微小天体の衝突などにより変質・変形すること。
注3:「希ガス」 ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)などからなるガスの総称で、地球上での存在量が少ないことや他の元素とほとんど反応しないなどの特徴を持つ。
注4:「イトカワ由来の証拠」 昨年11月の発表では、その鉱物組成が主な根拠として挙げられていた。ここでは新たな根拠が示されている。
注5:「SPring-8」 兵庫県にある大型放射光施設。高エネルギーの光を当てることで物質の詳細な構造分析を行うことができる。