太陽系の観測史上最も遠方で発見された小天体「ファーアウト」
米・カーネギー研究所のScott Sheppardさんたちの研究チームが、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)」を使った観測から新天体「2018 VG18」を発見した。チリ・ラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡での確認観測の結果、この天体が太陽から120au(太陽から地球までの距離の約120倍=180億km)の距離に位置していることがわかった。これは、発見時の距離としては、準惑星エリスの96auを大きく上回る新記録だ。100auを超える距離で太陽系天体が発見されたのも今回が初めてとなる。2018 VG18には「ファーアウト」(Farout)という愛称が付けられた。
「2018 VG18 はたいへん遠くにあるため軌道速度が遅く、おそらく太陽の周りを一周するのに1000年はかかるでしょう」(米・ハワイ大学 David Tholenさん)。明るさから判断すると、新天体の大きさは直径500kmの球形で準惑星クラスと考えられる。また、氷を多く含む天体に見られるピンク色の色調をしていることもわかっている。
Sheppardさんたちの研究チームでは、理論的に予測されている太陽系の未知の惑星「プラネット・ナイン(第9惑星)」を含む、太陽系外縁部の天体の探査を行っている。2014年に太陽系外縁天体「2012 VP113」を発見し(現在の距離は84au)、その軌道からプラネット・ナインの存在を提唱した。2018年10月にもすばる望遠鏡の観測から、80au彼方の太陽系外縁天体2015 TG387を発見している。
これら2天体の軌道は、海王星や木星といった太陽系の大きな惑星から離れており、これらの惑星から受ける重力的な影響はほとんどないとされている。そしてその軌道の性質は「プラネット・ナイン」の存在を支持すると研究チームは考えている。
今回発見された天体 2018 VG18は動きが遅いため、その軌道を確定するには今後数年の追跡観測が必要となるが、2012 VP113や2015 TG387に近い方向で発見されており、その軌道も似ている可能性がある。既知の遠方の太陽系外縁天体の多くは軌道の性質がお互いに類似しており、これらは数百au彼方の未知の惑星の影響を受けているかもしれないと考えられている。
2018 VG18が「プラネット・ナイン」の存在を示唆するこれらの天体に新たに加わるかどうか、今後の観測が待たれる。
〈参照〉
- カーネギー研究所:Discovered: The Most-Distant Solar System Object Ever Observed
- すばる望遠鏡:すばる望遠鏡を使い、太陽系の最も遠くで発見された天体
- MPEC:2018-Y14: 2018 VG18
〈関連リンク〉
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