天文学者と市民天文学者とのタッグで解明した銀河進化の謎

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すばる望遠鏡が撮影した銀河の画像を用いた市民天文学プロジェクト「GALAXY CRUISE」の成果をもとにした研究から、銀河が衝突・合体する際に銀河の中の様々な活動性が高くなることが明らかになった。

【2023年10月13日 すばる望遠鏡

宇宙には赤っぽい色の楕円銀河や青い色の渦巻銀河、形が崩れた銀河など、多種多様な銀河が存在している。このような多様性には、銀河同士の衝突や合体が大きく関係していると考えられてきたが、合体中の銀河の観測例は稀なため、銀河同士が合体するときに何が起こるのか理解は深まっていない。

銀河が衝突・合体する際には形がゆがめられ、銀河の周りに特徴的な形が見えることがある。すばる望遠鏡に搭載されている超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)」は、今まで見つかっていなかった衝突・合体の淡い痕跡を多くの銀河でとらえているが、これらの特徴はとても淡く、見逃されてしまうことが多い。

そこで国立天文台では、一般市民(市民天文学者)の力を借りてHSCが撮影した観測画像を探索し、合体中の銀河を見つけてその形を分類する市民天文学プロジェクト「GALAXY CRUISE」を、2019年11月に開始した。最初の2年半で約1万人の協力を得て、200万件を超える分類の結果が集まった。これは天文学者だけではとてもなし得なかった数字だ。

市民天文学者が行った分類結果からは、これまで楕円銀河と思われていた銀河の周りにはっきりと渦巻き構造が見えるケースや、衝突・合体銀河の中でも特に激しい合体の現場にある銀河が発見された。激しい衝突・合体をしている銀河は形が大きく崩れ、複雑な形をしている。このような銀河は珍しく、見つけるのが難しい。

GALAXY CRUISEで分類された銀河の一例
HSCで観測され、「GALAXY CRUISE」のプロジェクトで市民天文学者に分類された激しい合体の瞬間にある銀河の例。大きく形が崩れた銀河ばかりで、合体の激しさがうかがえる(提供:国立天文台)

GALAXY CRUISEの「船長」である国立天文台の田中賢幸さんは、この分類結果を用いて詳細な解析を行った。すると、衝突・合体をしている銀河は、そうではない銀河と比べて、星の形成活動が活発になっていることがわかった。さらに、銀河の中心にある超大質量ブラックホールの活動性も高まっていることが明らかになった。活動性が高いということは、大量の物質がブラックホールに流れ込んでいることを意味する。特に激しい衝突・合体の現場にある銀河ではその傾向が著しく、銀河同士が最終的に合体する際に、銀河の中で様々な活動が引き起こされることを示している。

今回得られた銀河の分類結果は、論文の出版とともに世界中の研究者に向けて公開された。科学的価値を認められた市民天文学者の分類は今後、さらに世界中の研究者に広く活用され、銀河進化の研究が進むと期待される。

「GALAXY CRUISEは銀河の画像から衝突・合体の痕跡を探すという、とても時間はかかるものの、直接的で強力な手法です。HSCの画質の高さと、市民天文学者の協力という両輪があって、今までの研究よりも衝突・合体銀河の良いサンプルが得られたと考えています。全て市民天文学者の皆さんの貢献のおかげです。この論文のように市民の皆様も貢献できます。GALAXY CRUISEはまだ航海の途中です。ぜひ乗船して、銀河の謎に一緒に挑みましょう」(田中さん)。

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