天体数7.7億、すばる望遠鏡HSCアーカイブ追加公開
【2022年6月27日 すばる望遠鏡】
今回すばる望遠鏡から発表されたのは、2021年に一般公開が始まったアーカイブ「Hyper Suprime-Cam Legacy Archive(HSCLA)」の第2弾リリースである。このアーカイブは、すばる望遠鏡に搭載されている超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (ハイパー・シュプリーム・カム;HSC)の撮影データを広く研究に役立ててもらうために始まったプロジェクトだ。
画素数8億7000万ピクセルで、一度に満月9個分の広さを撮影できるHSCは、使用を申請した研究者たちによる共同利用観測に稼働時間の多くをあてている。共同利用で撮影されたデータは、申請した研究者たちが各々でノイズの除去などの処理を施して使用する一方、撮影の1年半後には未処理のデータを一般公開することになっている。しかし、せっかくの膨大な公開データも、空の状態や装置の特性によるムラやノイズが乗ったままでは使いにくい。
そこで、HSCLAでは共同利用観測の生データを処理し、さらに写っている天体の明るさ、色、大きさ、形なども計測して公開している。昨年の初公開に含まれていたのは2014年に撮影されたデータだけだったが、今回は2015年分と2016年に取得された比較的観測条件の良いデータ(約2万回の露出で総計800時間分)を加え、最新の解析手法で処理している。今回のリリースだけで、中間処理のものも含めると450テラバイトというビッグデータだ。HSCLA全体では、全天の約8%にあたる約3400平方度をカバーし、約7億7000万個の天体の計測データも含んでいる。
「HSCLAでは、ビックデータを効率よく解析するためのツールも提供しています。これらのツールを使って、まだ誰にも見つからず埋もれている貴重な情報をHSCLAからたくさん発掘し、その楽しさを存分に味わっていただきたいです。大発見も期待しています」(国立天文台ハワイ観測所 原沢寿美子さん)。
〈参照〉
〈関連リンク〉
関連記事
- 2024/09/10 カイパーベルトの外側に10個以上の天体を発見
- 2024/03/21 市民天文学とAIで渦巻銀河とリング銀河を大量発見
- 2023/10/19 宇宙から降り注ぐ宇宙線「空気シャワー」の可視化に成功
- 2023/10/13 天文学者と市民天文学者とのタッグで解明した銀河進化の謎
- 2023/09/19 クエーサーが生まれるダークマターハローの質量はほぼ同じ
- 2023/04/21 アストロメトリと直接撮像の合わせ技で系外惑星を発見
- 2023/04/14 ブラックホールの合体で光は放たれるか?
- 2023/04/11 すばる望遠鏡の探査が、宇宙の新しい物理を示唆
- 2022/11/15 すばる望遠鏡の次世代分光装置、星の光をとらえる試験に成功
- 2022/09/16 すばる望遠鏡「星空ライブカメラ」本格運用スタート
- 2022/04/05 すばる望遠鏡、暗い低温度星の化学組成を明らかに
- 2021/11/30 すばる望遠鏡とAIで奇妙な銀河を複数検出
- 2021/10/07 すばる望遠鏡の大規模探査データの第3期世界公開
- 2021/04/30 最遠方のガンマ線放出銀河を発見
- 2021/04/27 すばる望遠鏡の次世代分光器が夜空のスペクトルを観測
- 2021/02/17 史上最遠で見つかった太陽系天体「ファーファーアウト」
- 2021/02/04 すばる望遠鏡HSCのデータアーカイブが始動
- 2020/12/23 すばる望遠鏡、「はやぶさ2」の次の目標天体を撮影
- 2020/12/17 ガイアとすばる望遠鏡で実現、効率的な系外惑星捜索
- 2020/11/26 すばる望遠鏡が「はやぶさ2」を撮影