すばる望遠鏡とAIで奇妙な銀河を複数検出
【2021年11月30日 すばる望遠鏡】
すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)」を用いた大規模観測「すばる戦略枠プログラム」によって、5億個を超える天体が検出されている。その中に発見数が少ないために統計的解析が難しい希少銀河や未知の天体が紛れている可能性があるものの、天体数が膨大なため、人の手やコンピューターを用いた既存の解析手法では天体を探し出すのに時間がかかってしまう。
大量のデータを効率的に処理する手法として、近年では機械学習が活用されている。東京大学の田中匠さんと国立天文台の嶋川里澄さんたちの研究チームは機械学習の一つ「異常検知」を用いて、希少天体や未知の天体を探査するプロジェクト「SWIMMY(Subaru WIde-field Machine-learning anoMalY)」を立ち上げた。異常検知ではラベル付けされた大量の教師データを必要とせず、入力されたデータ内から珍しい特徴を持つデータの抽出を行う。
HSCで撮影された約5万枚の銀河画像に対して異常検知手法を用いたところ、全サンプルの約12%から中心部分に珍しい色の特徴や明るさを持つ銀河が検出された。これらを既存の銀河カタログと照合したところ、検出された候補天体の中には、クエーサーや爆発的に星形成をしている銀河といった珍しい特徴を持つ既知の銀河が、6割程度の割合で選択できていた。
また、スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)で取得された分光データとの比較から、多くの候補天体が一般的な銀河に比べて非常に強い輝線を示す天体であることがわかった。本手法によって初めて検出された(既存の銀河カタログに含まれていない)候補天体の中に、これまで見落とされてきたクエーサーや極度に強い輝線銀河が多く含まれている可能性を示唆している。
「サマーステューデントプログラムに参加する前までは機械学習に触れたことすらなかったため、このような研究を進めて約1年後に論文を書き上げているとは全く予想していませんでした。現在は検出した候補天体について、詳細な解析を行うために追観測を行うことを考えています。また、よりたくさんのデータへ適用したりモデルを改良したりすることで、本手法を発展させることができます。特定の種類の天体を検出するモデルの開発などにも応用可能であると考えており、本研究は様々な発展性を秘めた研究であるといえます」(田中さん)。
「こうした探査手法は世界的にもまだ発展途上で、今後も引き続きモデルの開発と実証実験を重ねていきたいと考えています。2020年代には次世代大型探査が開始され、かつてないビッグデータが構築される見込みです。その中から天文学者の想像を超える未知の天体を発見する手段として、異常検知AIが強く期待されています。今回、田中さんの素晴らしい働きによって、この究極の目標に向けて大きな一歩を踏み出すことができました」(嶋川さん)。
〈参照〉
- すばる望遠鏡:すばる望遠鏡×異常検知 AI が捉えたへんてこな銀河たち
- PASJ:Where’s Swimmy?: Mining unique color features buried in galaxies by deep anomaly detection using Subaru Hyper Suprime-Cam data 論文
〈関連リンク〉
- すばる望遠鏡
- すばる戦略枠プログラム
- 総合研究大学院大学天文科学専攻:サマーステューデントプログラム(夏の体験研究)について
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