すばる望遠鏡や「ひので」太陽望遠鏡など4件が「重要科学技術史資料」に

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第18回重要科学技術史資料に、国立天文台のすばる望遠鏡、観測衛星「ひので」に搭載の可視光太陽望遠鏡、兵庫県立西はりま天文台のなゆた望遠鏡、JAXA宇宙科学研究所の1.3m赤外線望遠鏡が登録された。

【2025年9月16日 国立科学博物館

国立科学博物館では、「科学技術の発達上重要な成果を示し、次世代に継承していく上で重要な意義を持つもの」や「国民生活、経済、社会、文化の在り方に顕著な影響を与えたもの」に該当する資料を「重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)」として登録している。

9月10日に第18回(2025年度)「重要科学技術史資料(未来技術遺産)」への新規登録資料として計14件が発表された。そのうちの4件として、国立天文台のすばる望遠鏡、太陽観測衛星「ひので」に搭載されている可視光線太陽望遠鏡(SOT)、兵庫県立西はりま天文台のなゆた望遠鏡、JAXA宇宙科学研究所の1.3m赤外線望遠鏡が登録された。


すばる望遠鏡:日本が世界に誇る8m級大型光学赤外線望遠鏡

すばる望遠鏡は、日本が初めて海外に設置した大型光学赤外線望遠鏡で、その主鏡は単一鏡としては世界最大級の口径8.2mを誇る。20世紀末当時、日本にはこの規模の大型望遠鏡建設の経験がほとんどなかったが、電波望遠鏡や衛星通信の技術などの駆使により開発が成功し、1999年に米・ハワイ島マウナケア山頂に設置された。

2000年の本格観測の開始以降は、最遠方の銀河の発見記録を再三塗り替えるなど、世界を驚かせる天文学上の成果を上げ続ける世界に誇る大型望遠鏡である(参照:「観測史上最遠、130億光年彼方の原始銀河団」「135億光年の彼方、最遠方銀河の候補」)。

マウナケアの青空とすばる望遠鏡ドーム
マウナケアの青空とすばる望遠鏡ドーム(提供:Sebastian Egner/NAOJ


「ひので」可視光太陽望遠鏡:太陽観測を行う国産初の本格的宇宙望遠鏡

太陽観測衛星「ひので」は、2006年に打ち上げられた、可視光線・極端紫外線線・軟X線という異なる3波長を観測する国産初の本格的宇宙望遠鏡だ。今回重要科学技術史資料に登録されたのは、その「ひので」に搭載された口径0.5m可視光太陽望遠鏡(SOT;Solar Optical Telescope、可視光磁場望遠鏡とも)。SOTの開発には、すばる望遠鏡に採用された17の主要技術のうち9点が適用されている。

無重力状態を模擬した世界初の光学性能評価方法は、その後の衛星搭載光学機器の開発にも継承されている。また望遠鏡としては小口径ながら理論的限界値である0.2秒角の分解能も達成し、太陽の磁場構造太陽フレアの観測などの成果を挙げていて、過去に科学雑誌「サイエンス」の表紙も飾った

太陽観測衛星「ひので」のイラストと可視光太陽望遠鏡の写真
(左)太陽黒点の画像と太陽観測衛星「ひので」のイラスト、(右)打ち上げ前の可視光太陽望遠鏡(提供:国立天文台(左)(右)


なゆた望遠鏡:すばる望遠鏡の技術を適用した単一鏡国内最大2.0m光学望遠鏡

西はりま天文台(兵庫県佐用町)のなゆた望遠鏡は、三菱電機株式会社が製造した国内最大口径2.0mの単一鏡構成光学望遠鏡で、すばる望遠鏡に採用された主要技術のうち12点の応用により、小型化・低コスト化を実現している。

その高性能から「ミニすばる」とも呼ばれ、2007年には恒星の二重円盤構造を発見するなど、国際的な科学成果を挙げてきた。また、すばる望遠鏡や他の大型望遠鏡の観測装置の試験運用にも活用されていて、研究開発の現場でも重要な役割を果たしている。

さらに、一般見学者向けの眼視観望装置を備えた世界最大級の望遠鏡として、公開天文台としての機能も持ち、科学教育・市民天文学の普及にも大きく貢献している。

なゆた望遠鏡
なゆた望遠鏡(提供:西はりま天文台


ISAS 1.3m赤外線望遠鏡:国内初の経緯台方式かつ建設当時国産最大口径の望遠鏡

JAXA宇宙科学研究所(神奈川県相模原市)の1.3m赤外線望遠鏡は、日本国内初の経緯台方式で、1988年の建設当時の国産最大口径の望遠鏡。そのころ、日本ではまだ大型光学赤外線望遠鏡の開発経験がなかったが、のちにすばる望遠鏡を担当する設計陣によって、そのプロトタイプの位置付けとして製造された。

同望遠鏡に適用された経緯台方式、フリクション駆動方式等の技術は、ドームの小型化を含む望遠鏡の低コスト化の道を拓き、その後の国産大型望遠鏡の開発コンセプトに大きな影響を与えた。また、すばる望遠鏡をはじめとするその後の2000年代における国内1~2m級望遠鏡の建設ラッシュを導いた。

JAXA宇宙科学研究所の1.3m赤外線望遠鏡
JAXA宇宙科学研究所の1.3m赤外線望遠鏡(提供:ISASニュース 2003.7 No.268


■ 「重要科学技術史資料」パネル展(一部実物資料を展示)
  • 期日:~2025年9月28日(日)
  • 会場:国立科学博物館(東京都台東区) 日本館1階 中央ホール
  • 通常入館料:一般・大学生630円/高校生以下および65歳以上は無料

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