宇宙の夜明けに輝いた最古の超大質量ブラックホールを発見
【2026年7月9日 すばる望遠鏡】
遠方の銀河の中心にある超大質量ブラックホールに物質が引き込まれると、明るく光る「クエーサー」として観測されることがある。なかには母銀河全体を大きく上回るほど輝くクエーサーもあり、遠方の宇宙、すなわち初期宇宙の観測で重要な目印となる。宇宙初期のクエーサーは過去の宇宙の姿を映し出す「タイムマシン」のような存在でもあり、宇宙最初の銀河や超大質量ブラックホールの誕生、成長を探る手がかりとなる。

クエーサーの想像図(提供:ESA)
すばる望遠鏡では過去10年にわたる観測で、比較的暗いクエーサーを約200個発見してきた。しかし、赤方偏移が7を超える(宇宙誕生から約8億年後以下の)最遠方時代の発見数は限られていて、全体像を把握するには数が不足していた。
オランダ・ライデン大学のDa-Ming Yangさんたちの研究チームは宇宙望遠鏡「ユークリッド」による観測で、赤方偏移が7前後のクエーサーを新たに31個発見した。ヨーロッパ宇宙機関が2023年に打ち上げたユークリッドは、広い空を一度に観測できる広視野と遠方天体の発見に欠かせない高い赤外線感度を兼ね備え、初期宇宙の探査に非常に適した望遠鏡だ。
31個のクエーサーのうち、りゅう座方向の「EUCL J172902.75+641018.1」と「EUCL J125308.55+705432.3」の赤方偏移はそれぞれ7.77と7.69で、観測史上最古(最遠)のクエーサー記録を更新した。これらは宇宙誕生から約6億7000万年後の初期宇宙に存在していたと考えられる。全体としては12個のクエーサー赤方偏移が7を超えていて、これまで9個しか見つかっていなかった発見数が倍以上に増えた。

発見されたクエーサー(15個を抜粋)。赤文字のラベルの2天体が記録を更新した。画像クリックで表示拡大(提供:ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, image processing by the Euclid Science Ground Segment and Antoine Basset (CNES))
「ユークリッドの優れた赤外線データを最大限に生かすには、より波長の短い可視光線の観測データとの組み合わせが欠かせません。とくに初期宇宙のクエーサー探査では、赤外線で明るく、可視光線で急激に暗くなる天体を選び出す必要があります。最遠方記録を更新した2天体の選び出しには、すばる望遠鏡の観測データが実際に使われました」(ユークリッド国際チームメンバー 早稲田大学 尾上匡房さん)。
2024年2月に本格的にサーベイを開始したユークリッドは、全天の3分の1以上という広域に存在する銀河を数十億個も観測し、宇宙の構造を明らかにする三次元地図の作成を目指している。6年間にわたるサーベイで、初期宇宙に存在する数百個のクエーサーが発見されると期待され、銀河と超大質量ブラックホールの誕生、進化の全体像の解明が大きく進むと考えられる。
「地上で行われてきた探査の先へ、ユークリッドがこれほど早く到達できたことは驚きです。今後、最遠・最古の記録が塗り替えられることは確実でしょう。そのために、すばる望遠鏡による観測も引き続き重要です。ビッグバンのどれだけ近くまでクエーサーが見つかるのか探査を続けたいと思います」(ユークリッド国際チームメンバー 愛媛大学 松岡良樹さん)。
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〈参照〉
- すばる望遠鏡:宇宙の夜明けに輝いた最古の超巨大ブラックホールを発見
- ESA:Euclid discovers the most ancient quasar in the Universe
- The Astronomy & Astrophysics:Euclid: Discovery of 31 new quasars at 6.6 < z < 7.8 論文
〈関連リンク〉
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