初期宇宙で成長中のブラックホール同士が出会う現場を発見

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新たな手法を用いた画像解析により、初期宇宙の新種天体「リトル・レッド・ドット」の候補同士が近接ペアを作っている様子が見つかった。ブラックホール同士が接近している現場を見ているのかもしれない。

【2026年9月3日 カブリIPMU

近年、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測により、初期宇宙に、非常に小さく、特徴的な赤い色を持つ新種の天体が多数発見されている。この新種天体は見た目から「リトル・レッド・ドット(Little Red Dot、LRD)」と呼ばれ、ブラックホールが周囲の物質を活発に取り込み、急速に成長している天体であると考えられている。

典型的なLRD
典型的なLRDの赤外線画像。JWSTの1.5μm, 2.8μm, 4.4μm付近のフィルターで撮影された画像を用いて作成された擬似カラー画像。画像右下の白線は約5000光年に対応(提供:COSMOS-Web / Tanaka)

LRDがブラックホールであるとすれば、LRD同士が接近、合体してより大質量のブラックホールへと進化することも考えられるが、そのようなペアの観測例はほとんど見つかっていない。これまでの一般的なLRD探索では、天体の色に加えて天体像が「1つの点像に見える」ことを選択条件としていたため、LRD同士が近接ペアとなっている場合には見落とされてきた可能性があったためだ。

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(カブリIPMU)/東京大学の田中匠さんを中心とする研究チームは、従来のように天体全体の明るさや色だけを用いるのではなく、画像を構成する1つ1つのピクセルについて色を調べる「ピクセルごとの色選択法」を新たに開発した。

この手法を用いて、JWSTによる大規模観測プログラム「COSMOS-Web」で取得された高解像度の赤外線画像を解析し、近接しているために1つの複雑な天体のように見えるLRDを探索した。その結果、約125~128億年前の宇宙で、2つのLRD候補が非常に近接して存在するペアの候補を4組発見した。各ペアのLRD同士の間隔は数千~数万光年程度で、天の川銀河(直径約10万光年)と比べても非常に小さいスケールである。

発見されたLRDペア候補天体
発見されたLRDペア候補天体の赤外線画像(擬似カラー画像)(提供:Tanaka et al. 2026, PASJ / COSMOS-Web)

ただし、ペア同士のLRDは見かけ上で同じ方向にあるだけで距離が異なり、実際には近接していない可能性も考えられる。そこで、観測領域におけるLRDの個数や分布を基にして、近接ペアが偶然生じる確率を計算したところ、発見された4組全てを偶然の重なりだけで説明することは難しく、LRDが数千光年程度の小さなスケールで強く集まりやすい可能性が示された。また、4組のうち2組のペアについては分光データから赤方偏移が求められ、各ペアを構成するLRDの赤方偏移がほぼ一致していること、つまり実際に近接していることが確認された。

LRDペアのスペクトル
LRDペアのスペクトルの例。各LRDから同じ波長に輝線が検出され、同じ時代に存在するLRDペアであることが強く示されている(提供:Adapted from Tanaka et al. 2026, PASJ / COSMOS-3D)

今回発見されたLRDペアは、LRDを含む銀河同士が相互作用し、合体へ向かう途中の姿という可能性がある。銀河の相互作用は、中心部へ大量のガスを運び、ブラックホールへの物質供給を活発にする仕組みの一つと考えられている。今回の研究結果は、銀河同士の接近や合体が、初期宇宙におけるブラックホールの急速な成長と関係している可能性を示唆するものだ。

また、それぞれのLRDに成長中のブラックホールが存在していれば、ブラックホール同士も接近し、最終的に合体する可能性がある。こうしたブラックホール合体は、将来の宇宙重力波望遠鏡がとらえる重要な現象の一つになることも期待される。

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