リトル・レッド・ドットの赤さは過大質量ブラックホールの形成環境が生み出す?

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初期宇宙の謎の天体「リトル・レッド・ドット」と「過大質量ブラックホール」は別々に議論されてきたが、これらを一つの形成過程として結びつけたシミュレーション研究の成果が発表された。さらに、リトル・レッド・ドット中のブラックホールが超大質量ブラックホールへ成長する道筋も示された。

【2026年9月30日 国立天文台 天文シミュレーションプロジェクト】

近年のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による観測で、宇宙誕生から10億年未満の時代に「リトル・レッド・ドット」(Little Red Dot、以下LRD)と呼ばれる小さく赤い謎の天体が多数発見されている(参照:「初期宇宙の謎の天体に赤外線とX線観測で迫る」、「初期宇宙の「赤い光点」の正体?『ブラックホール星』を発見か」)。LRDの正体については多くの議論が交わされているが、銀河の中心で大量のガスを取り込みながら急速に成長するブラックホールである可能性が有力視されている。

LRDs
JWSTがとらえたLRDs(提供:NASA, ESA, CSA, STScI, D. Kocevski (Colby College))

この解釈に基づいてブラックホールの質量を見積もると、LRDに含まれる星の質量に比べてはるかに重い「過大質量ブラックホール」が存在することになるが、このようなブラックホールが宇宙初期にどのように生まれたのか、なぜ赤い点として観測されるのかは大きな謎となっていた。

独・マックス・プランク天体物理学研究所の鄭昇明さん、神奈川大学の平野信吾さん、千葉大学の石山智明さんを中心とする研究チームは、スーパーコンピューターを用いたシミュレーションにより、宇宙初期の原始銀河団でガス雲の収縮によって超大質量星が形成されるところから、ブラックホールの誕生と初期成長、さらに観測可能な特徴が現れるまでを高精度に計算した。

従来のシミュレーションではブラックホールの存在をあらかじめ仮定し、その成長を計算で追いかけていた。今回、研究チームは新たな手法を開発し、ブラックホールをあらかじめ仮定することなく、どのような宇宙環境で重い種ブラックホール(成長前の段階のブラックホール)が生まれるのか、その後どう成長するかまでを追跡した。

その結果、LRDに見られる特徴が、重い種ブラックホールの形成と急速な成長によって生じる可能性が示された。

宇宙の大規模構造の形成から、ガスに包まれたブラックホールが形成されるまでの過程を、国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイIII」を用いて段階的に計算したシミュレーションの可視化映像(提供:鄭昇明、武田隆顕、国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト)

シミュレーションでは、明るい銀河の強い紫外線がガス雲の冷却を妨げて星形成を遅らせ、その間にダークマター(暗黒物質)の集まりが成長して大量のガスが集まる様子が見られた。やがて、過密な原始銀河団の中でガスの収縮が始まり、誕生した原始星が急速に成長することで超大質量星へと進化した。とくに重いものは太陽の50万~90万倍にも達し、これらの超大質量星が進化して崩壊することで、太陽の約100万倍の質量を持つ非常に重い種ブラックホールが自然に形成された。

宇宙初期の原始銀河団におけるガスの分布と、その中でのブラックホールの形成・成長のシミュレーション
宇宙初期の原始銀河団におけるガスの分布と、その中でのブラックホールの形成・成長のシミュレーション。(a)近くの星形成銀河(白い点線で囲まれた領域)から強い紫外線を受けたガス雲の中で超大質量星が形成され、その後の進化によって重い種ブラックホール(黒い星印)が誕生する。(b)このシミュレーションでは、ブラックホールが2つ形成された。これらのブラックホールは、近くの銀河へ移動しながら成長する。(c)やがて、ブラックホールはガスの濃い銀河の中心へ移動し、さらにガスを取り込みながら成長する。(d)このようなブラックホールの形成と成長は、約5億光年の範囲で最も銀河が密集した原始銀河団で起こった(提供:Chon et al. 2026、以下同)

こうした重い種ブラックホールの周囲には高密度のガス円盤が形成され、そこから大量のガスが種ブラックホールに供給された。その結果、種ブラックホールは急速に成長し、宇宙誕生から約6億年後には太陽の約3000万倍の質量に達した。最初から重い種ブラックホールが大量のガスを取り込んで急成長することで、若い銀河の星の質量に比べて極めて重いブラックホールが形成されたと考えられる。

さらに、成長するブラックホール周辺のガスから放たれた光は、濃いガスの中で繰り返し吸収・散乱されて赤く見えるとともに、水素の光も電子による散乱で広がって幅広い輝線を生じた。これらはLRDの特徴とよく似ている。つまり、過大質量ブラックホールが形成される環境そのものが、同時にその天体をLRDとして見せる特徴も生み出していたと考えられる。

重い種ブラックホール周囲のガス円盤の様子
重い種ブラックホール周囲のガス円盤の様子(シミュレーション結果)。ブラックホール誕生直後(誕生後2万6000年時点)の姿。(左)ブラックホールを円盤上空から見たもの、(右)円盤を横から見たもの。誕生直後のブラックホールは、高密度で厚いガス円盤に包まれている。このガスによって、LRDで観測される赤い光や幅広い水素の輝線が生み出される

今回の研究は、これまで別々に議論されてきたLRDと宇宙初期の過大質量ブラックホールを初めて一つの形成過程として結びつけ、銀河中心に存在する超大質量ブラックホールへと成長する道筋を示した。

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