アルマがとらえた「ハンバーガー原始星」
【2017年7月7日 アルマ望遠鏡】
オリオン座の方向1300光年彼方にある原始星HH 212は、4万歳と生まれたばかりの星で、太陽(46億歳)よりもきわめて若い天体だ。星の周囲を塵の円盤が取り巻いているが、地球から観測するとこの円盤を真横から見る角度になっており、しかも中心に暗い筋が入っているため、まるでハンバーガーのように見えるのが特徴だ。
台湾中央研究院天文及天文物理研究所のChin-Fei Leeさんたちの研究チームは、この「ハンバーガー原始星」をアルマ望遠鏡で観測し、原始星を取り囲む複雑な有機分子の分布と、噴き出しているガスのジェットが回転していることを発見した。いずれの発見もアルマ望遠鏡の高い解像度によって得られた成果である。
複雑な有機分子は、生命の起源に関連するかもしれないアミノ酸の材料にもなりうる物質だが、これがHH 212を取り囲む円盤の上空に存在していることが発見された。アルマ望遠鏡による観測で原始星の周囲に複雑な有機分子が検出された例はこれまでにも何度かあったが、原始星の周りのどのあたりに分布しているかが画像としてとらえられたのは今回が初めてだ。星や惑星が作られていく過程で、生命の材料になりうる分子がどこでどのような化学反応を経て作られるのか、という謎に迫る上でこの発見は重要な意味を持つ。
また、HH 212は非常に細く絞られた高速のジェットを噴き出していることで有名だが、このジェットの根元を詳しく観測したところ、ジェットが回転していることも明らかとなった。原始星ジェットはこれまでにも様々な望遠鏡で観測されてきたが、これほど高い解像度で観測されたのは今回が初めてだ。
星はガスや塵が集まることで誕生するが、その元となるガス雲はわずかに回転しており、ガスや塵が中心に集まるにつれてその回転は速くなる。回転が速くなると遠心力も強くなり、ガスや塵が内側に落下できなくなるが、これでは星が成長することができなくなるため、実際には何らかのメカニズムによって回転の勢いが抜き取られていると考えられてきた。
その原因として、噴き出すガスのジェットが有力とされていたが、これまでジェットの回転ははっきりととらえられていなかった。今回の発見は、ガスがどのように原始星に降り積もるのか、という星の誕生に関する長年の謎を解く手がかりとなる。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡:「ハンバーガー原始星」を取り巻く有機分子と回転ジェット
- The Astrophysical Journal:Formation and Atmosphere of Complex Organic Molecules of the HH 212 Protostellar Disk 有機分子に関する論文
- Nature Astronomy:A rotating protostellar jet launched from the innermost disk of HH 212 ジェットの回転に関する論文
〈関連リンク〉
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