すばる望遠鏡のアーカイブから見つかった彗星の予想外の素顔

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すばる望遠鏡観測データの公開アーカイブから、コマのない状態の彗星が見つかった。彗星核表面の反射特性が予想外のものであると判明し、彗星と小惑星の違いの理解につながる成果が得られた。

【2026年9月1日 すばる望遠鏡

彗星は氷や塵で構成された小天体で、太陽系の外縁部で誕生した後、あまり変化を受けていない。そのため、約46億年前の太陽系誕生時の物質を今に残す「タイムカプセル」のような天体と考えられている。一方、小惑星は主に火星と木星の間に分布する岩石質の小天体である。

かつて両者は別種の天体と考えられていたが、近年の観測から、水を含む小惑星や小惑星に似た鉱物を持つ彗星核のほか、探査機「はやぶさ2」がサンプルリターンした小惑星リュウグウと彗星の中間タイプの「暗い」小惑星が見つかるなど、その境界は曖昧になってきている。

彗星と小惑星の表面が本当に似ているのか、根本的に異なるのかを明らかにすることは、太陽系天体の誕生や歴史を理解するうえで重要な課題である。ただし、彗星核を直接観察できるのは、氷が昇華しないほど太陽から十分に遠く、コマが発生していない時期に限られる。しかも、そのような彗星は非常に暗く、大口径の望遠鏡でなければ検出できない。

さらに、核の表面の性質を調べるには、太陽を背にして彗星をほぼ真正面から見る「衝」と呼ばれる配置で観測する必要がある。天体を真正面から見ると、表面の粒子が作る影がほとんど見えなくなるため、普段より明るく見える。さらに、粒子の間で散乱した光が観測者の方向へ集まりやすくなる効果も加わり、明るさが急激に増すことがある(衝効果)。この効果を調べると天体表面を覆う粒子の大きさや詰まり具合などを推定できるが、条件がそろう機会は極めて限られる。

衝の模式図
衝の模式図(提供:国立天文台、以下同)

産業医科大学の大坪貴文さんを中心とする研究チームは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(Hyper Suprime-Cam;HSC)」を用いた大規模サーベイプログラム「すばるHSC戦略枠サーベイ(HSC-SSP)」で取得され、公開されているアーカイブデータの中から、太陽系小天体が写り込んでいる画像を体系的に調査してきた。

研究チームはこの調査で、ネウイミン彗星(28P/Neujmin)が、太陽から10天文単位(約15億km)以上離れた、土星よりも遠い場所で、コマのない状態で写っていることを発見した。しかもその画像は太陽・彗星・地球がほぼ一直線に並ぶ衝に近い、理想的な条件で撮影されていた。この画像から研究チームは、地上観測としては世界で初めて、彗星核表面の反射特性を精密に測定することに成功した。

ネウイミン彗星
2016年3月7日にすばる望遠鏡のHSCがとらえていたネウイミン彗星(白枠とその拡大画像の中心)。HSCの104枚の検出器のうちの1枚が写したもので、ネウイミン彗星の他に2000個以上の星や銀河が写っている。画像クリックで表示拡大

解析の結果、ネウイミン彗星の表面の色は、水を多く含むような暗く(反射率が低く)赤みを帯びたタイプの小惑星とよく似ていることがわかった。これは従来の研究による予想を支持するものである。

ところが、衝における明るさの変化を調べたところ、予想外の違いが見られた。一般にこうしたタイプの小惑星では、真正面から見たときの増光はそれほど大きくないのだが、ネウイミン彗星では、光をよく反射するタイプの小惑星に匹敵するほどの大きな増光が見られたのだ。

ネウイミン彗星の核は、色や光の反射のしやすさの点では反射率の低いタイプの小惑星に似ているが、表面の微細な構造は大きく異なっているのかもしれない。こうした独特の表面構造は、太陽に近づくたびに氷の昇華を繰り返すことで作られた可能性が考えられるという。

「すばる望遠鏡の公開アーカイブには、まだ見つかっていない興味深い太陽系小天体のデータが眠っています。今後様々な彗星について同様の観測を進めることで、太陽系の歴史の中で、彗星核の表面構造がどのように作られてきたのか、さらには太陽系の天体がどのように形成され、現在の姿になったのか、理解が進むでしょう」(大坪さん)。

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