本誌各号の編集後記を掲載。
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■2000年12月(創刊号)東京・原宿の一軒家の屋上に天体ドームがおかれていることを、道行く人びとは理解できないらしい。東京では星なんか見えるはずないという先入観から、「単に建物のデザインの一部じゃないの」とか、「珍しい格好した物置きだね」とか…その中に天体望遠鏡が入っていることにまで頭が回らない。それが今どきの普通の人たちの感覚なんだろう。端から、都会では星は見えないものとして決めつけてしまっている。たしかに、道路には水銀灯が煌々と輝き、週刊誌の見出しどころか、文庫本の文字さえも読めてしまう。水銀灯の光で目が眩んでいるから、そのまま空を見上げても星が見えるわけないのだ。しかし、そんな劣悪な環境であっても、水銀灯の光を遮ってやれば、星座の形がどうにか分かる程度には星が見えているのだ。そう、都会の空にだって星は輝いている。 近年、星に興味を持つ子供が激減しているという話を聞くが…それも道理で、正しい星の見かたを知らなければ興味の湧きようもないのだ。 昨夏、表参道にある小学校 の校舎屋上で天体観察会を開いた。夜にもかかわらず多くの児童、父兄が集まり、東京の夜空の月や金星、二重星を見て歓声をあげてくれた。終了の時間が来ても熱心に望遠鏡を覗く子供たちの姿にちょっと感動し、星空の持つ魅力を再確認することができた。 また、都心から車で1時間ほどで行ける遊園地で行なわれた星を見るイベントでは、普段星を見ることなどほとんどない、東京や横浜といった、都会から来た子供連れのファミリーが、目を輝かせて星空に見入っていた。 国内の有名観測地につながる道路に見物客が集中し、道路渋滞が起きたという「しし座流星群」や、今年の皆既月食はまだ記憶に新しい。 普段、星など見ないたくさんの人たちが、天文イベントに興味をもち、具体的なアクションを起こしたのだ。マスコミの報道に煽られたにしても、その潜在層の多さに目を見はる思いがした。
人間は太古の昔から、星空に深い関心を持ち、日々の暮らしに役立ててきた動物だ。人間の体内時計は天界の運行とシンクロナイズしていたのではなかったか? 美しい星空を仰ぎ見るとき、夕空に輝く月の姿を目にするとき、えもいわれぬ安らぎを感じるのは人間の持って生まれた感性ではないのか? 日常の生活の中で星を見る機会が与えられ、その手順が分かりさえすれば、その懐に飛び込んでいけるのではないだろうか? 「星ナビ」は、星空に興味を持つ人たちに、星に接するためのさまざまな方法や、実際に星を見るときのノウハウを伝えられるナビゲータでありたいと考えている。読者のライフスタイルは千差万別だが、日常のライフスタイルの中に「星を楽しみ、星と遊ぶ」ことをもっと気楽に組み込んでいただけるようなさまざまなアプローチのしかたを提案していきたいと思う。
編集長 大熊正美
※「スカイウオッチャー」休刊に際し、読者やクライアントの皆様から多くの惜別の言葉をいただきました。それが、本誌創刊に至るまでの編集部の原動力となりました。皆様のご温情に心から感謝すると共に、これからもより一層の御支援をお願いいたします。 |