本誌各号の編集後記を掲載。
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■2001年9月どうしたわけか、いくらも雨の降らないうちに関東地方だけが、いち早く梅雨明けしてしまい、連日30度をこす猛暑がやってきた。おかげで、接近中の火星を堪能することができたのだが、毎日毎日気流の悪さに悩まされることになった。 我が家のドームの真南には、昨年オープンした6階建てのテナントビルがあるが、このビルの空調設備から排出される温排気のせいで、最も条件の良くなるはずの南中前後の火星がもろに影響を受け、アイピースの視野の中で、まさに躍っているかのごとく揺らいでしまうのだ。 深夜営業しているわけでもないのに、各階のテナントの照明は煌々と街を照らしだしているし、人のいない館内をただひたすら冷やし続ける冷房装置。たしかに広い空間を冷却するのに時間がかかるのは分かるが、何も一晩中運転し続けることもないだろうにと思うのだが……。 さて、そんなわけで火星観望は家から80メートルほど離れた駐車場まで移動し、車に積んである赤道儀を組み立て、その日の気分に応じて自宅から28センチシュミカセか、16センチニュートンを運んでのジプシー(?)観測となってしまった(う〜ん? 何のためのドーム? 何のための35センチ? 何か本末転倒的な香りが……)。 それでも、シーイングははるかに良好で、大シルチスから子午線湾へかけての美しい模様や太陽湖周辺の微細構造など、お気に入りの観光地を楽しむことができた。特に?火星の目玉模様?といわれる太陽湖周辺を見ながら「あの下まぶたの部分が、壮大なマリネリス峡谷なんだ」などと考えるととても楽しい。 駐車場が遊歩道に隣接しているためか、お客さんも多い。はじめて火星を見て感激する彼女を、つまらなそうに見る連れの男。総じて女性の方が興味の度が高いように感じるのは気のせいか? さて、いよいよ夏本番。夏となれば流星の季節がやってくる。ペルセウス座流星群を皮切りに、秋のしし群、そして冬のふたご群まで、注目の流星群が目白押しなので、ぜひご覧いただきたい。 流星といえば、日本流星研究会の高梨雅彰氏が7月13日未明に他界されたとの訃報が飛び込んできた。流星をはじめとして天文界における氏の功績は大きく、長く天文普及につとめられ、当社刊行の雑誌やムックなどにも数多く御協力いただいた。今年の流星界最大のイベントともいえる11月の「しし座流星群」を見届けることなく旅立たれた氏に、深く哀悼の意を表します。
編集長 大熊正美
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