本誌各号の編集後記を掲載。
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■2004年7月結局、4月末に見えたブラッドフィールド彗星がいちばん立派だった。暫定軌道が発表されたのは4月になってからだったので、4月に書店に並んでいる5月号に載っているのは、当然リニア彗星とニート彗星のことばかり。ブラッドフィールド彗星のブの字もない。で、その次の6月号はというと、5月の彗星の位置は何とか載せられたものの、発売日は5月6日で、すでにその時点では彗星はだいぶ暗くなってしまっている。雑誌を情報の拠り所にしていただいている読者の皆さんには申し訳ない結果となってしまったが、発売日の関係で、何とも天文雑誌泣かせの、まさに彗星らしい(?)彗星であった。 ネットで最新情報を仕入れ、彗星を表示させたステラナビゲータのプリントアウトを携えて、4月25日、友人と富士山中腹のとある駐車場へと向かった。 天気は快晴、ここぞという地点に車を停めて、スポッティングスコープを持ち出してひと通り夏の天体を眺めた後、明け方まで待つこと数時間。車中で仮眠をとっていたところ、ふと目が覚めて気が付くと、車の脇に立てておいたスポッティングスコープが……無い! 慌てて車のドアを開けようとすると、ドアのすきまからブオォーというものすごい風と、たたきつける砂粒。空は雲ひとつない快晴で、透明度は抜群なのに、富士山頂から吹き下ろす強風で車の外に出るのがやっと。車から座席の座布団が飛び出し、三脚は鏡筒を載せたまま横倒しになっていた。筒先のフードからは富士の溶岩がじゃらじゃらと出てくる始末(レンズは無事)。悔しいかな、快晴なのに、悪天候。もうすぐ彗星が昇ってくる時刻だというのに、やむなく山を降り、山麓のとある公園へと移動した。そこで夜が明けるまで、ほんの短い時間であったが、火球をふたつと彗星をふたつ目撃し、戦いは終わった。 その後、当初のいわゆる2大彗星のほうは、暗めでやや残念ではあったが、ブラッドフィールド彗星が、彗星というのは突然現れるものなんだよ、と改めて教えてくれた気がする。
(編集長・大川)
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